本文へ移動
TORENDIA

暗い天候

本文約390字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

トタン屋根に降る雨音を聞きながら、社交界も世間もない犬や虫に毒づき、涙をたたえて仰向けに横たわる哀しい夜を詠む中原中也の詩。

中原中也

速度
🎧 暗い天候 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

二

こんなにフケが落ちる、

秋の夜に、雨の音は

トタン屋根の上でしてゐる……

お道化てゐるな――

しかしあんまり哀しすぎる。

犬が吠える、虫が鳴く、

畜生! おまへ達には社交界も世間も、

ないだろ。着物一枚持たずに、

俺も生きてみたいんだよ。

吠えるなら吠えろ、

鳴くなら鳴け、

目に涙を湛へて俺は仰臥さ。

さて、俺は何時死ぬるのか、明日か明後日か……

――やい、豚、寝ろ!

こんなにフケが落ちる、

秋の夜に、雨の音は

トタン屋根の上でしてゐる。

なんだかお道化てゐるな

しかしあんまり哀しすぎる。

三

この穢れた涙に汚れて、

今日も一日、過ごしたんだ。

暗い冬の日が梁や壁を搾めつけるやうに、

私も搾められてゐるんだ。

赤ン坊の泣声や、おひきずりの靴の音や、

昆布や烏賊や洟紙や首巻や、

みんなみんな、街頭沿ひの電線の方へ

荷馬車の音も耳に入らずに、舞ひり舞ひり

吁! はたして昨日が晴日であつたかどうかも、

私は思ひ出せないのであつた。

完

中原中也の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本