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TORENDIA

落葉

本文約2,500字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

樹々から落ちる葉に重ねて過ぎゆく月日を捉え、二度と同じ瞬間は巡り来ないという生の不可逆性と虚無を綴る。一度失われた笑顏や過去は決して戻らず、萬物は絶え間ない運動の中で変転し続ける。しかし、刹那の生の中で新たな幻影が絶えず湧き上がり、人は宇宙の循環を構成する不可欠な要素として存在している。本書は、儚く消えゆく現在を積み重ね、自らの生を全うすることの貴さと、その有限な時間を懸命に生きる意義を論じる随筆である。

レミ・ドゥ・グルモン Remy de Gourmont

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🎧 落葉 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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樹々に落葉のある如く、月日にも落葉がある。無邊のあなたから吹いて來る音無の風は歳月の樹々を震はせて、黄ばみ戰く月日をば順々に落してゆく。落ちてどこへ行くのだらう。黄ばみ戰く木の葉はどこへ行くのだらう。言ふまでも無く、それは自然が歳々の復活を營むあの大實驗室へ行くのだ。それがまた新に青くなつて、一樣になつて、歸り來る時、葉の裁方にまで變が無い、白楊の葉は心の臟、橡の樹のは掌、篠懸の樹のは三叉の鋒の形だ。然しあの黄ばんで、戰いて散りこぼれた月日の落葉は一體どうなつたのだらう。遠い、遠い、未知不可思議のいかなる世界へ、永久に持ちゆかれて了つたのか。誰もこれを復見たことが無いからだ。なるほど、年々の若葉ともいふ可き新の月日、また世に出ない月日、待受けぬ月日、意外の月日、好になる月日、恐しい月日は歸つて來ても、過ぎた昔の親みのある、願はしい、待受けてゐるあの月日は戻つて來ない。年々歳々の木の葉の方は、たとひ、われらが認め得ないとても、必らず再び立歸る。

然り、これも月日である。始あり、終あり、光あり陰あつて、闇に生れ、闇に消えゆく。たしかに月日だ、然し同じものではない。其頬笑も顰め顏もてんで違つてゐる。授け與へる其悦は少しの物吝も無く分配されるが、香が違ふ、色が違ふ。昔、君を恍惚たらしめたあの笑顏にまた逢はうなどと望み給ふな。あれはもう亡くなつた。其生れるのを見た月日が戻つて來ない如く、これは君の愛する顏の上にまたと立歸るものでは無い。それでは、せめて、君の愛する其顏だけでも、其儘變なくまたと眺められるだらうか。悲しいことには、さういかない。或は思做でさうと瞞されることはあつても、儚い心の試に過ぎぬ。月日は闇に消えゆきながら、人間の顏を少しづゝ記念として持ち去るからだ。或は、遠くの遠くの不思議な世界まで、これらの顏の斷片を持つていつて、それを土臺に全く別の新しいのを造上げるかも知れないが、これとても確とは受合はれぬ。

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