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TORENDIA

あじゃり

本文約11,000字 ・ 読了時間 約22分

あらすじ(AIが作成しました)

下野富田の村に住む菊世は、山寺で質素に暮らす阿闍利の変容を快庵禅師に語る。かつては村人から慕われ、穏やかな心で自然と共生していた阿闍利だが、ある時からその様子は一変する。童子と共に暮らすようになって以降、勤行を絶ち、人鬼と噂されるほど荒廃した山寺。後に禅師がこの寺を訪れた際、阿闍利の変わり果てた姿を通して、迷いぬいた精魂がとどまる山寺の凄惨な実態を明らかにする。

室生犀星

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下野富田の村の菊世という女は、快庵禅師にその時の容子を話して聞かした。

「わたくしが峯のお寺へ詣るのは、ひと年に二度ばかりでございます。春早く雪が消えるころと、秋の終りころとでございます。これはわたくしの家の掟でございまして、その折には四季に食べるお斎糧を小者にかつがせ、腐らぬ漬物などを用意してまいります。峯の阿闍利さまはそのたびにわたくし一家のために護摩壇に坐りながら、一年の災厄を除いてくださるのでございます。峯の御坊寺はごぞんじでしょうが、雨風に荒れてはいますが、一度お詣りをしたあとは爽ぱりとしたよい心持でございます。わたくし一家はごらんのように十二人で暮しておりますが、先祖から御坊を信じているのでございます。御坊の前に池がありますが、先祖はあの池で山芋を掘りながら珍らしい黄金の環を拾ったと伝えております故か、いまだに御謝恩の心づかいでお詣りにあがるのでございます。畑に出ておりましても峯の方へ向うては、尻向けぬように致し息子らもそれを守っておるのでございます。

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