本文へ移動
TORENDIA

呪咀

本文約550字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

行手に立ちふさがる墓や、風に傷つけられる木々、地の底で争う根などの姿を通して、世界のあらゆる事象が逃れられない宿命に縛られている様子を綴る。生きとし生けるものが抱えるどうしようもない苦しみや憂鬱、そして他者との関わりの中で生じる抗いがたい精神の葛藤を鋭く捉える。肉体と心の境界や生物と無機物の交錯する様を描き出し、逃げ場のないわなのようなこの世で生きることの切なさや不条理を詩情豊かに表現する。

土谷麓

👁 1 ビュー
速度
🎧 呪咀 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

私の行手に横たわっていた白い墓が 今度は起き上ってじっと私の顔を見ている 私にはそこにゆくより路がない。 どうせ卑俗な 夢がたみだ 私の霊魂の全部に ぐにゃぐにゃした笑顔がくっつき 私の両側はどうせ苦悶の姿ばかりだ だが此のデリカなかかり合いにはどうせ奴らのぴくついた神経では 何としても 防げない精神力の強さがある どうしようもない苦しみ いつなくなろうとも果しれぬ憂鬱 どこに行っても不具者らのうめき声の堆積を見せつけられ 私はやがての後のつまらないあがきを求めていたのだ 空に向って生きようと折角両手をひろげた木も十月にはその手をもぎとられる あの姿のない風にさえも 風は烈しい痛みを持っているのに相違ない 熱情のおりのおりの底からだまって灰色の眼を光らせている――

嵐の後のかなしい植物らの呪咀、怨嗟の声 地の底には根と根の沈潜したみにくい闘争があり、空には太陽と月のじれったい戯れがある どうして此のわなの中からはい上ろう どうして此の荒縄を断ち切ろう どうして此の肉と心とのさかいを解易く区別出来よう。

いいや一切の 地の上の生物、無機物、有機物あらゆる組合わされたもののかみあいが 面白く切なげに展開するのは それはそうしなければ生きられぬ奴らの どうにもならないくさびがあるからだ やがて邪魔になればほうられる やがてうるさく思われれば捨てられる

完

同じジャンルの朗読つきの本