TRENDIA CLASSIC

撫でられた象

中原中也

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様々な議論が沸騰してゐるけれど、それらの何れもはや議論といふよりは彷徨、それも随分無責任な、身入りのしないことにしか過ぎない。かくて人々は、それを時代のせゐに帰したりするのだが、それとて十分の根拠を有することでもない。

現代は不安な時代であらうか? それはさうでもあらう。然るに文学者達が斯くも自信を失つてゐるのは強ちそのせゐであらうか?――然し、事象は歴史を織りなして行くであらうが、歴史が事象を織りなしてゆくとは冠履転倒のことであるから、時代なぞといふ方から文学を考へるよりも、文学者自体の実状を反省してみることは却て賢明なことであらう。

扨、さういふことにすれば、現今文学者が彷徨してゐるといふことも、私には案外簡単なことに思へて来る。

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