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TORENDIA

青年青木三造

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

大学を卒業し帰京した青木三造の心境と、彼を取り巻く世間との齟齬を描く。三造は「無念そう」と評される自身の外見と、内面のひたむきな戦いの間で葛藤する。現実を素直に感受しながらも言葉にすることに慎重で、世間の通俗的な評価とは異なる本質的な直観を抱えている。病身の母親を看病し、金銭的成功を求めないその姿は、世間からどう扱われるか測れない謎を湛えている。作者は世間と三造の調停者として、彼の内なる混沌を言語化しようと試みる。

中原中也

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🎧 青年青木三造 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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一 三造の心事 ――三造の友人達に。

三造は、この世に自分くらゐ切ないがまた、呑気といへば呑気な男はないと思つてゐた。事実彼は呑気であつた。

或時三造の一寸知つた男が彼に言つた。「無念さうな顔をしてかァ」。実際さういはれてみれば自分は無念さうな顔をしてゐたもんだと三造は思つた。「でも、自分の心の中は、無念さうなのではないのだがなあ。しかし……」。三造はドギマギした。それからまた放心したやうな眼をした。だが何か、言ふべきことがあるやうな気がした。尠くとも考ふべきことがあると思つた。しかし、それは、吁、何時ものやうにまた、結論には到達せずに終るであらう――といふことが一種の幻想のやうに彼の眼前を掠めた。

しかし、彼は、かなしかつた……かなしかつた。そして、かなしいといふことは、語る権利があるといふことのやうに吾人にはともかく思はれる。

それでは、彼には何が語りたかつたのであらう? 何が語りたかつたのであらうか? 蓋し、語る言葉はなかつたかもしれぬ、歌ふべきことがあつたかもしれぬが、それは今の事ではない。即興詩の、聴手は喜ぶものであれど、歌ふ身になつてみれば心許ないわざであらう。

彼は、押し黙る。押し黙つた顔といふものは、人の前で、つづくものではない。それはやがて花のやうに萎む。「無念さうな顔をしてかァ」とまたしても人はいふであらう所の顔は現出するのである。「無念さうな顔をしてかァ」といつた男は、自分の言つたことは正しかつたのであつたと思つてしまふ。そして、此処で此の世の、世間の評価、通価といふものは定まるのである。而して、かの、別に能もないけれど世渡りは上手といふ手合は、この通価といふものを素直に受容れ、それを材料として献立してゆくのである。まことにまことしやかな世間といふものが、自信を以て時に軽剽の罪を犯すのであつてみれば、それは、そのわけは此処にあるのである。

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