本文へ移動
TORENDIA

山間秘話

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

春の森を舞台に、牡兎は牝狐を訪ねるが、狐は彼を疎ましく思い隠れてしまう。何度も狐を誘おうと試みる兎に対し、狐は捕らえようと待ち伏せを行う。また、百姓家の庭では、牡雀が灰色の牝馬を口説こうと企み、高価な贈物を要求されるという滑稽な駆け引きが繰り広げられる。これら二つの動物の物語を通じて、狡知を巡らせる者たちの滑稽で皮肉な対立や、人間臭い交流の様子を描く。

中原中也

速度
🎧 山間秘話 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 3

牝狐と牡兎

春であつた。牡兎の血の環りはよくなつてゐた。勇ましくはないまでも、しやきしやきしてゐた。一日兎は森に這入つて行つた、牝狐を訪ねる算段で。彼が森の径を巡つてゐる時、牝狐は家で囲炉裡にあたつてゐた。仔狐達は窓の近くで遊んでゐた。牡兎が森の方からやつてくるのを見付けると牝狐は、急いで子供達に云つた、「何時もの彼が来たらば、私は家にゐないとお云ひ。あれは私を誘き出す悪魔なんだからね! あのお馬鹿に来て欲しかつたのはもうずつと前のことだよ。今ではどうにかして殺してやりたいくらゐなんだから。」さう云つて彼女は家の奥に匿れた。牡兎はやつて来て扉を叩く。「どなたです? と仔狐達は云ふ。――私ですよ、と訪問客が答へる、おはやう! おつ母さんはお家かね?――いいえ、ゐません!――困つたな! 私は用事があつて来たのに……ゐないなんて!」そこで牡兎が再び森の方に跳び返つた。

中原中也の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本