一本刀土俵入 二幕五場
本文約22,700字 ・ 読了時間 約46分
あらすじ(AIが作成しました)
水戸街道の宿場町で、空腹の力士志願者・駒形茂兵衛は偶然出会った博労に助けられる。その際、茶屋の酌婦・お蔦から思いがけず親切を受け、茂兵衛は恩義を感じる。十年後、旅姿となった茂兵衛は、かつて助けられたお蔦が、夫の辰三郎とお君と共に危機に陥っていることを知る。茂兵衛は彼らを逃がすため、立ちはだかる悪党たちを力士の技で次々と倒していく。無事に三人を送り出した茂兵衛は、桜の花の下で自身の姿を重ね、感慨に耽る。
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〔序幕〕 第一場 取手の宿・安孫子屋の前
第二場 利根の渡し
〔大詰〕 第一場 布施の川べり
第二場 お蔦の家
第三場 軒の山桜
駒形茂兵衛 老船頭 筋市
お蔦 清大工 河岸山鬼一郎
船印彫辰三郎 お君 酌婦お松
船戸の弥八 いわしの北 同 お吉
波一里儀十 籠彦 博労久太郎
堀下げ根吉 おぶの甚太
伊兵衛・女房おみな・料理人・帳付け・通りがかりの人々・近所の人々・赤金の升・盆持ちの良・渡しの船夫・渡しの客・子守子(一・二)・八公・買物の男女・そのほか。
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〔序幕〕
第一場 取手の宿・安孫子屋の前
常陸の国取手は水戸街道の宿場で利根を越えると下総の国。渡しはそこの近くにある。
取手の宿場街の裏通りにある茶屋旅籠で安孫子屋の店頭は、今が閑散な潮時外れである。それは秋の日の午後のこと。
(安孫子屋は棟の低い二階建で、前と横とがT字型に往来になっている。角店のこの家は突ッつきが広い土間、その他は外から余り見えない。階下と二階の戸袋は化粧塗りの、漆喰細工で、階下は家号を浮きあがらせた黒地に白、二階は色漆喰の細工物で波に日の出)
(安孫子屋の角柱の処に菊の鉢が一つ置いてある。外側の窓の脇に榎の老木があり竹垣を四方に結ってある。その中で秋草が少し咲いている)
(二階は三尺障子が閉まっている)
店の前に料理人、帳付け、酌婦お吉、お松、その他が立って、道路の向うでしている喧嘩の方を見ている。そっちの方から喧嘩する男の声が聞えているが、だれの眼にもまだ見えていない、二階では近在からきている放蕩者が、酌婦を相手に遊んでいると見え、三味線の爪弾きの音が聞える。