TRENDIA CLASSIC
古図の信じ得可
き程度
木暮理太郎
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古図を閲覧するに当りて何人も抱く可き疑問は、其図が輯製の当時既に知られたる事実を、果して如何程まで広く採録せりや否やといえることなる可し。ここに所謂古図とは主として徳川時代に出版されたる地理に関する絵図類をいう。此等の図に拠りて地形の正確なる説明を大要なりとも知らんとするが如きは、欲する者の無理なるは言う迄もなく、唯だ山川都邑道路等に就て其概念を得ば以て満足す可き也。余は古図の価値は、其等の相対的関係位置割合に正しきや否や、山河村落の名称及道路等割合に多く採録されあるや否や等に依りて決す可きものならんと信ず。故に若し一の絵図が其輯製当時に於ける既知の事実を尽く採録せるものならば、最も価値あり最も信ず可き絵図なりというを得可き道理なるも、此の如きは交通不便にして報道の自由を欠きし時代に在りては、元より望む可くして行わる可きものとは思われざるのみならず、絵図の多くは個人の輯録に成るものなれば、少なからざる遺漏ある可きは察するに難からざるを以て、当然之を割引するも、尚お余の期待に反すること大なるものあるを認め、古図に拠りて立論するの或場合には甚だ危険なるを感じたり。勿論余は広く古図を渉猟して、そのすべてを詳細に調査したるに非ず、僅に三、五のものに就て大体を探究し、特に上州の一局部を精査したるに過ぎざれば、すべての古図皆然りというは同じく危険なる結論に到達するの嫌なきに非ずと考えしも、一を以て他を類推し、さしたる不都合なきを認めたるは、余の少しく意外とする所也。今左に其一例として菅沼を挙げ、古絵図の如何なる程度まで信頼して差支なきやを知らんとす。
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