かろきねたみ
本文約1,900字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
愛らしさと憎しみの入り混じる揺れ動く恋心や、移ろいゆく季節の風情、日々の生活の中にある孤独と哀歓を綴る。作者が自らの内面を見つめ、男性との触れ合いや独りで過ごす時間の繊細な機微を、三味線の音や朝の光、冷たい水の手触りといった情景とともに鮮やかに描き出す歌集。日常の些細な出来事を通して、女性特有の情熱と寂寥、そして愛する人への複雑な想いを率直に表現し、その時々の心の彩りを静かに掬い取っていく。
💰 この本を応援する(投げ銭)
女なればか
力など望まで弱く美しく生れしまゝの男にてあれ
甲斐なしや強げにものを言ふ眼より涙落つるも女なればか
血の色の爪に浮くまで押へたる我が三味線の意地強き音
前髪も帯の結びも低くしてゆふべの街をしのび来にけり
天地を鳴らせど風のおほいなる空洞なる声淋しからずや
朝寒の机のまへに開きたる新聞紙の香高き朝かな
我が髪の元結ひもやゝゆるむらむ温き湯に身をひたす時
かろきねたみ
捨てむなど邪おもふ時に君いそ/\と来ぬなど捨て得むや
ともすればかろきねたみのきざし来る日かなかなしくものなど縫はむ
三度ほど酒をふくみてあたゝかくほどよくうるむさかづきの肌
淋しさに鏡にむかひ前髪に櫛をあつればあふるゝ涙
生へ際のすこし薄きもこのひとの優しさ見えてうれしかりけり
悲しさをじつと堪えてかたはらの灯をばみつめてもだせるふたり
をとなしく病後のわれのもつれがみときし男のしのばるゝ秋
袷の襟
垢すこし付きて痿へたる絹物の袷の襟こそなまめかしけれ
君なにか思ひ出でけむ杯を手にしたるまゝふと眼を伏せぬ
むづがゆく薄らつめたくやゝ痛きあてこすりをば聞く快さ
ちら/\と君が面に酔ひの色見えそむる頃かはほりのとぶ
唇を打ちふるはして黙したるかはゆき人をかき抱かまし
昂ぶりし心抑へて黒襦子の薄き袖口揃へても見つ
いつしかに歔欷てありぬ唄ひつゝ柳並木を別れ来にしが
暗の手ざはり
美しくたのまれがたくゆれやすき君をみつめてあるおもしろさ
たま/\にかろき心となれるとき明るき空に鳥高く飛ぶ
春の夜の暗の手ざはりぼと/\と黒びろふどのごとき手ざはり
君のみを咎め暮せしこの日頃かへりみてふと淋しくなりぬ
唇をかめばすこしく何物かとらえ得しごと心やはらぐ
めずらしく弱き姿と君なりて病みたまふこそうれしかりけれ
いとしさと憎さとなかば相寄りしおかしき恋にうむ時もなし
旧作のうちより
橋なかば傘めぐらせば川下に同じ橋あり人と馬行く
ひとつふたつ二人のなかに杯を置くへだたりの程こそよけれ
ゆるされてやや寂しきはしのび逢ふ深きあはれを失ひしこと
愛らしき男よけふもいそ/\と妻待つ門へよくぞかへれる
折々は君を離れてたそがれの静けさなども味ひて見む