TRENDIA CLASSIC

大戦乱後の国際平和

大隈重信

1 / 8

将来の世界の平和の予想  今度スタンホルドのジョルダン博士が会長となって、桑港に於て平和会議が開かれる。日本からも是非人を出してくれということであったから、誰かに行ってもらおうと思ったが、誰も行かれぬ。仍って向うに行っている服部宇之吉氏と海老名弾正氏、二人とも平和協会の会員だからこの二人に列席してもらうことにしたが、何か日本の会長として祝文でもやってくれということであった。そこで、後に掲げている祝文を送った。

実は、文明諸国の国内は既に平和だ。多少の争いはあるといっても、例えば日本でいえば、党派の争い、政友会とか同志会とかの争いであるけれども、これは平和の上の争いである。そうすると、今日の平和ということは国際間の問題である。そこで、今度の大戦乱も国際間の大競争であって、その根本には民族的競争が伏在するのである。この民族的競争と世界大戦争と国際平和との関係を説いて、将来の世界の平和を予想してみよう。まず古代の帝国主義、即ちすべての民族を集合する古代帝国主義、換言すれば、今日の民族的帝国主義に非ざる古代主義より説いてみよう。

古代の帝国主義  古代の帝国主義は、民族的観念を根本とせぬので、即ち種々雑多の異民族を征服集合するというのであった。例えば、希臘人は自国以外を野蛮国と呼び、これを征服するを主義としたのである。故に、かつてマセドニヤの使節は希臘の「エートリヤン」会議で他人種、即ち野蛮人バーバリヤンと我が希臘人とは永久に戦争すべしと叫んだ。

支那もまたその通りで、自国以外を東夷、南蛮、北狄、西戎といった。これは希臘人と同じである。漢武帝、成吉汗等は、その眼中に映じ来る他国を一々民族の如何を問わず征服するという、古代の帝国主義者であったのである。

大隈重信の他の作品