TORENDIA
舞姫
森鴎外
TORENDIA
舞姫
本文約16,200字 ・ 読了時間 約33分
あらすじ(AIが作成しました)
ドイツに留学した官吏・太田豊太郎は、貧しい踊り子エリスと出会い、恋に落ちる。立身出世と愛のはざまで揺れる、留学生の悲恋を描く、鴎外の初期の代表作。
🎧 まだ音声版はありません
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
💰 この本を応援する(投げ銭)
1 / 22
石炭をばはや積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと静かにて、熾熱燈の光の晴れがましきも徒なり。今宵は夜ごとにここに集い来る骨牌仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人のみなれば。五年前の事なりしが、平生の望み足りて、洋行の官命をこうむり、このセイゴンの港まで来しころは、目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新たならぬはなく、筆に任せて書きしるしつる紀行文日ごとに幾千言をかなしけん、当時の新聞に載せられて、世の人にもてはやされしかど、今日になりておもえば、穉き思想、身のほど知らぬ放言、さらぬも尋常の動植金石、さては風俗などをさえ珍しげにしるししを、心ある人はいかにか見けん。こたびは途に上りしとき、日記ものせんとて買いし冊子もまだ白紙のままなるは、独逸にて物学びせし間に、一種の「ニル・アドミラリイ」の気象をや養い得たりけん、あらず、これには別に故あり。
げに東に還る今の我は、西に航せし昔の我ならず、学問こそなお心に飽き足らぬところも多かれ、浮世のうきふしをも知りたり、人の心の頼みがたきは言うも更なり、われとわが心さえ変わりやすきをも悟り得たり。きのうの是はきょうの非なるわが瞬間の感触を、筆に写して誰にか見せん。これや日記の成らぬ縁故なる、あらず、これには別に故あり。
森鴎外の他の作品
TORENDIA
杯
森鴎外
杯
森鴎外 ・ 約7分
TORENDIA
追儺
森鴎外
追儺
森鴎外 ・ 約13分
TORENDIA
寒山拾得
森鴎外
寒山拾得
森鴎外 ・ 約17分
TORENDIA
遺言三種
森鴎外
遺言三種
森鴎外 ・ 約4分
TORENDIA
なかじきり
森鴎外
なかじきり
森鴎外 ・ 約5分
TORENDIA
空車
森鴎外
空車
森鴎外 ・ 約6分
TORENDIA
夢
森鴎外
夢
森鴎外 ・ 約4分
TORENDIA
みちの記
森鴎外
みちの記
森鴎外 ・ 約18分
TORENDIA
文芸の主義
森鴎外
文芸の主義
森鴎外 ・ 約3分
TORENDIA
木精
森鴎外
木精
森鴎外 ・ 約7分
TORENDIA
里芋の芽と不動
の目
森鴎外
里芋の芽と不動の目
森鴎外 ・ 約10分
TORENDIA
食堂
森鴎外
食堂
森鴎外 ・ 約17分