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TORENDIA

『辭林』緒言

本文約580字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

国語を思想の代表者とし、辞書をその宝庫と見なす著者が、近代以前の辞書編纂の歩みを振り返る。明治の学術隆興に対し、従来の辞書が近世の著作の枠組みを脱せず現代語への対応が不十分である現状を指摘する。本書は、長年収集した材料をもとに現代に適した辞書の編纂を目指した経緯を述べ、その刊行と今後の改訂に対する抱負を綴る。

金澤庄三郎

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🎧 『辭林』緒言 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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あつめおく辭の林ちりもせでちとせかはらじ和歌のうら松   (續千載和歌集)

國語は思想の代表者にして、辭書は國語の寶庫たり。故に其内容は直ちに以て其社會の發達を卜し、其文華の程度を窺ふ料とすべし。我言靈の幸ふ國、我言靈の助くる國、古くより辭書に乏しからず。上は和名類聚鈔・新撰字鏡の類より、下は東雅・和訓栞・雅言集覽・俚言集覽等に至るまで、皆其時代に應じて撰述せられ、後の見るものをして略遺憾なからしむ。世々の學者亦勉めたりといふべし。明治の昭代、文物燦然として學術の隆興實に前代未聞なるに際し、國語學界の事業獨り之に伴はざる憾あり。辭書の如きも、未だ多く徳川時代の著作の羈絆を脱せず、中古以往の語にのみ詳にして、現代の活きたる言語に粗なり。これ社會全般の夙に認むるところにして、實に我學界のために惜まざるを得ず。明治式辭書の編纂は著者年來の希望にして、菲才を顧ず積年其材料の蒐集に從事し、今や漸く「辭林」の名を以てこれを公表するに至れり。然れども、由來、辭書編纂の業容易ならず、更に改訂を加ふべきところ亦多々あらん、著者は專心一意、身を此事業に捧げ、版を重ぬる毎に改刪増補を怠らざるべし。博雅の君子、若しこの意を諒とせば、幸に指教の勞を吝む勿れ。これ獨り著者の幸のみにあらざるなり。

明治四十年四月、歐米漫遊の途に就かんとする前三日 東都本郷西片町の寓居に於て 金澤庄三郎

完

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