本文へ移動
TORENDIA

「槐多の歌へる」序

本文約530字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

山崎省三の手元に遺された村山槐多の膨大な遺稿を基に、僚友らがその芸術的才能と自由で溌剌とした直観を世に広めようとする試みを綴る。短い詩の中に溢れる独創的な言葉と表現は、芸術家としての豊かな感性を鮮やかに描き出す。二十三歳という若さで多くのものを感受し尽くした夭折の詩人の全容と、その内面に潜む止み難い創造への欲求を、友人の視点から追体験させる作品である。

山本鼎

速度
🎧 「槐多の歌へる」序 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

槐多の詩集がとう/\出る。

――彼れにむけられた僚友らの強い愛のしるしだ。

それは死者を吊ふのでも、世に亡友を記念するのでもなく、

あの彈力ある觸を万人の胸に傳へ、あらゆる慾望の芽に、創造的情※[#「執/れんが」、U+24360、1-5]を灌漑しやうとする藝術家の愛である。

私は山崎省三君の手元に蒐められた一と重ねの遺稿を見て、其豐富な量に驚いた。

一と綴をとつて披くと短い詩の處で、それが忽ち私を魅了した。

自由でリユーのいゝ言葉、面白い契機、卒直に快活に表現された性慾――それは蓋し槐多の藝術、詩歌、日常生活のすべてに顯れた獨特な生采である。

槐多の歌へるは、冷靜な認識ではない、溌剌無垢な直覺であり、自由富饒な空想である。

すべてそれは、止み難き攝受のため息く吐息であつた。

稀に見る藝術上の鋭敏な味覺と、それにふさはしい貪臠な胃袋を有つた彼れは、廿三の晩年に、はやくもあらゆるものを味ひつくした觀がある。

そして秩序に脅かされねばならぬ、人生の或重くるしい時期を目の前にして、怖るゝが如く又親しむが如くに、死の方へ慌しく驅け込んでしまつたのであつた。

槐多よ、君の言葉が今多くの人に讀まれやうとして居る。「畜生! やりきれないなあ」と、顏一つぱいに笑ひ給へ。(九年六月六日)

山本 鼎

完

同じジャンルの朗読つきの本