生けるものと死せるものと
本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
生と死の境界に立つ愛する者の姿を追い、やがて来る離別と永遠の静寂を思索する詩集。日々を糧として生きる現在の愛おしさから、避けられぬ運命としての終わり、そして歴史の中に眠る死者たちの骨との対峙を描く。作者は、生ける者の瑞々しい息吹が消え、いつか冷たい灰へと帰していく無常観を見つめながら、それでも消え去ることのない永遠の姿を夢見、生の悦びと喪失の痛み、そして魂の安寧を綴る。
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汝は生けり。なが面おほへる青空を呑みつつ、
なが笑まひをわれは佳き小麥のごとき糧とす。
われは知らず、汝が心踈ましくなりて、
われを饑ゑ死なしむるはいつの日か。
孤獨に、絶えず脅かされつつ、さすらひゆく
われには、未來もなく、屋根ももはやあらじ。
われはひたすら恐るなり、家も、日も、年も、
汝がためにわれの苦しみし……
われをとり繞らせる空氣のうちに、われのなほ
汝を見、心ちよげに汝の見ゆるときすら、
汝がうちなる何物かはわれを棄ててやまず、
そこに在りながら、汝は既に去りゆく身なれば。
汝は去り、われは止まる、もの怯づる犬のごと、
日に赫ける砂のうへに額すりよせ、
口うごかして、その影を捉へんとすれば、
蝶は飛び立つてひらひら……
汝は去りゆく、なつかしき船よ。汝を搖すりつつ、
海は誇りてをらん、遙かかなたなる樂土を。
されども、此の世の重き荷はいよいよ増さん、
わが靜かなる廣き港に。
みじろがずにあれ。汝がせはしげなる吐息、
汝が身ぶりは、蘆間を分くる泉に似て、
わが心のそとに出づれば、盡く涸れん。いましばし止まれ、
わが憩ひなる、この胸騷ぎのうちに。
わが目ざしのなが目ざしとひとつになりて燃ゆるとき、
わが瞳の汝に見するは、いかなる旅か。
そはガラタのゆふべか、アルデンヌの森か、
あるひはまた印度の蓮の花か
ああ、汝が飛躍、汝が出立に胸壓しつぶされ、
われの手にてはもはや汝をこの世に止め得ずなりしとき、
われは思ふ、やがては汝にも襲ひかからん
倦怠の凄まじさやいかに。
快闊にして、心充ち足り、勇氣ありし汝、
王者のごとくにすべての希望を意のままにせし汝、
汝もまた遂にはかの奴隷の群れに入るか。
默默として、耐へて臥やせる……
野を、水を、時間を超えて、彼處に、
明瞭なる一點として、われは見る、
孤立せるピラミッドに似て、何か魅するがごとく、
汝の小さき墓の立てるを。
されど、悲しいかな、その墓のかなた、
汝の最後に往きつく先はわれには見えず、
汝を押し戻して、其處に歩み止まらしむるその限界、
汝を憩はしむる床やいかに。
汝は其處にて死してあらん、かのダビテの[#「ダビテの」はママ]輩や、
槍投げするテエベびとの死すごとく。