一休さん
本文約34,800字 ・ 読了時間 約70分
あらすじ(AIが作成しました)
後小松天皇の皇子として生まれた千菊丸は、母と離れて暮らす境遇に悲しみを抱きながらも、幼少期より類稀なる才覚を発揮する。いたずらを通して学問の道を究め、機知に富んだ禅問答で人々を導く存在へと成長する。やがて名僧として慕われるようになった一休は、天皇の勅命により大徳寺の住職に任命されるが、形式に捉われず、晩年まで小さな庵での清貧な生活を貫きながら、民衆に寄り添う生涯を全うする。
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お母さま
こどものとき 一休さんは、千菊丸という なまえでした。
ある はるの日の ことです。千菊丸は うばに つれられて きよみずでらに おまいりに いきました。
おてらの にわは さくらの 花が まんかいでした。
はらはらと ちる さくらの はなびらの したでは、おばあさんや お母さんに つれられた 子どもたちが、あそびたわむれています。
「きれいだなあ ばあや。」
しばらく 花に みとれていた 千菊丸は、ふと、むこうの いしだんの ところに いる おや子づれの こじきを みて、ふしぎそうに たちどまりました。
きたない きものを きた こじきの 母おやが、五つか六つぐらいの 子どもを そばに すわらせて、おもちゃを やっているのでした。
やがて 千菊丸は うばの 手を ひいて、たずねました。
「ばあや、あれなあに。」
「おや子の こじきです。まずしいので さんけいの 人に ものを もらって たべているのです。」
「そうじゃあないの、ばあや、千菊は あの おんなの こじきは あの 子どもの なんじゃと きいているのだよ。」
「あれは、お母さんと 子どもです。」
「ふうーん。」
と、千菊丸は いかにも ふしぎそうです。
「こじきにも お母さまが あるの、ばあや。」
「はい。こじきにも お母さまが いますよ、千菊さま。」
「ふしぎだ なあ。」
千菊丸は かわいい くびを かしげて、しばらく じっとして いましたが、
「あんな きたない こじきにも お母さまが あるのに、千菊に どうして お母さまが ないのだろう。ばあや、どうして 千菊には お母さまが ないの。」
と、ばあやの 手を ぎゅっと にぎりしめて いいました。
「ええ、千菊さまには……千菊さまには……。」
うばは、はたと こたえに つまって しまいました。
と いうのは、つぎの ような ふかい わけが あるからでした。
父は てんのう
一休さんの うまれたのは おうえい元ねん、いまから ざっと 五百六十年ばかり まえの ことです。
お父さまは ごこまつてんのうで、お母さまは いよのつぼね と いいました。