本文へ移動
TORENDIA

空に咲く花

本文約630字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

空間を支配する女性の歴史的変遷と、現代における女性の進出を論じる。かつては活動範囲が制限されていた女性が、文明の進歩とともに乗り物を操り、さらには飛行機やパラシュートという空間の立体的な克服へと領域を拡大する様子を描く。新しい活動の場に踏み出す女性たちの挑戦と、その成功が社会的な先入観や偏見をいかに変容させていくかを考察し、女性が自らの体力と知力で地球をわがものとしていく姿の意義を説く。

宮本百合子

速度
🎧 空に咲く花 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

空間をどこまで女性が自分の生活感情の中へ従えてゆくかということで、女の歴史の歩みが量られるのは何と面白いことだろう。昔の女性たちは、その生活の環をわずかに何十里の平面に限られて一生を過さなければならなかった。文明は進んで、女の動きは地球の上に相当広大な領域をもつようになった。けれども、汽車汽船などによる空間の征服は女性にとってまだ受け身な関係にあるものであった。

やがて自動車での陸地の跋渉がはじまって、初めて女性は自分の体力と智力とによって地球を平面的にわがものとするに到った。

女性が飛行機を操縦する時代になっていることは今世紀の人類的な飛躍の姿であると思う。より一層の体力とより一層の科学性とが女性の生活に加って来つつあることが、女性による空間の立体的な克服としてあらわれて来ているのである。

非常に珍しく又危険と思われているパラシュート操作のようなことでも、優しく若い女性たちによって無事に敢行されると、そのことで人々は危険が案外少いことや自分たちの日常に親しめることのように感じるのは、女性の優しさに対して抱かれている先入観の実に面白い微妙な逆作用だと思う。新しい女性の活動の領域に一歩ふみ出したそれらの雄々しい若い女性たちが、そのように成功した結果で人々に親愛の印象を与えるまでに経験ある困難と堅忍とを、私たちはあらためて評価しなければならない。女性が空間を支配する程度に従って、女性への偏見がおのずから克服されてゆくことも意味ふかいと思う。

〔一九四一年一月〕

完

宮本百合子の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本