TRENDIA CLASSIC
海の小品
原民喜
1 / 1
蹠
あたたかい渚に、蹠に触れてゴムのやうな感じのする砂地がある。踏んでゐるとまことに奇妙で、何だか海の蹠のやうだ。
宿かり
じつと砂地を視てゐると、そこにもこゝにも水のあるところ、生きものはゐるのだつた。立ちどまつて、友は、匐つてゐる小さな宿かりを足の指でいぢりながら、
「見給へ、みんな荷物を背負はされてるぢやないか」と珍しげに呟く。その友にしたところで、昨夕、大きなリツクを背負ひながら私のところへ立寄つたのだつた。
渚
歩いてゐると、歩いてゐることが不思議におもへてくる時刻である。重たく澱んだ空気のとばりの中へ足が進んで行き、いつのまにか海岸に来てゐる。赤く濁つた満月が低く空にかゝつてゐて、暗い波は渚まで打寄せてゐる。ふと、もの狂ほしげな犬の啼声がする。波に追はれて渚を走り廻つてゐる犬の声なのだ。ふと、怕くなつて渚を後にひきかへして行くと、薄闇の道路に、犬の声は、いつまでもきこえてくる。
原民喜の他の作品
TRENDIA CLASSIC
絵にそへて
原民喜
絵にそへて
原民喜 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
渚
原民喜
渚
原民喜 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
青空の梯子
原民喜
青空の梯子
原民喜
TRENDIA CLASSIC
悪夢
原民喜
悪夢
原民喜
TRENDIA CLASSIC
アトモス
原民喜
アトモス
原民喜
TRENDIA CLASSIC
秋日記
原民喜
秋日記
原民喜
TRENDIA CLASSIC
ある時刻
原民喜
ある時刻
原民喜
TRENDIA CLASSIC
ある手紙
原民喜
ある手紙
原民喜
TRENDIA CLASSIC
飯田橋駅
原民喜
飯田橋駅
原民喜
TRENDIA CLASSIC
遺書
原民喜
遺書
原民喜
TRENDIA CLASSIC
淡雪
原民喜
淡雪
原民喜
TRENDIA CLASSIC
椅子と電車
原民喜
椅子と電車
原民喜