TORENDIA
島の便り
折口春洋
TORENDIA
島の便り
本文約38,600字 ・ 読了時間 約78分
あらすじ(AIが作成しました)
太平洋戦争末期の昭和十九年から二十年にかけて、部隊に所属する藤井春洋が、折口信夫へ宛てた書簡を収める。戦地での殺風景な日々の生活や兵士たちの様子、内地に残した人々への気遣い、古書や歌への思いが綴られる。通信制限や戦局の緊迫した状況下にありながら、かつての旅路を懐かしみ、到来するはずの平和な日々を待ち望む心情を描く。離れた地にいながらも師を案じ、健康を願い合う切実な師弟の交流を伝えている。
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一 昭和十九年八月十九日着信(東京都品川区大井出石町五〇五二 折口信夫先生(はがき)[#改行]千葉県木更津郵便局気付 膽七八三八部隊玉井隊 藤井春洋) やつと第一報の機会を得ましたが、近況申しあげる訣にもまゐりません。たゞ健やかにゐることのみをお喜び願ひます。すつかり冴えきつた月星の空に向つて、この頃しきりに大森の様子が回想されることです。こちらは、永原鉦斎翁の志を継いでと思つても、たゞ名に負ふのみで、方違ひ、そんな風流も由縁もないことです。戦局のいよ/\迫つて参るにつけて、帝都の御生活の日に/\あわたゞしさを加へて居られることが思はれます。私なども、兵の上を思ひ自己を省てさし迫つた思ひに至ることが、日に幾度かございます。利子さん民子さん共によく御世話下さつてゐることゝ思つて、せめてもの心安らぎを得てゐます。どうぞよろしく申し伝へて下さい。鈴木さんはまだ満洲のことゝ思ひます。杏伯さん石川さん等にもよろしく申しあげて下さい。足一つあがりの宮もかくこそありけめ、と思ふ日ごろでございます。少しづゝ万葉も楽める心になつて来ましたので、歌も作りたいと思ひます。返信不用
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