母
本文約580字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
甘えん坊で育った幼い頃の記憶と、成長するにつれすれ違っていく母との関係を綴る。娘の心身の変化や苦悩を省みず、執拗に制止し距離を置く母の姿に恐怖と呪いを抱く日々。父の陰に隠れ、娘を見ようとしない母への複雑な感情を吐露する。やがて家と田んぼへの執着だけを残し、老いた娘と共に過ごした母との別れを経て、残された深い哀しみの淵と、今も聞こえる母の声を通して母とは何かを問い続ける詩である。
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わたしは子供のとき大変な甘えん坊で
そしてあまやかされて育っていた
あそびから帰るとすぐ母を呼び母をさがした
母はわたしをはなれて出かけることはできなかった
泣いて叫んでじたばたしたから
けれどもスッカリ変わってしまった
わたしは母を呼ばなかった
母には何もなかった
あふれて流れる泪を拭いてくれる手も
伸びつつ円くなってゆく体の
体のなかのやわらかな芽生えも母には何も見えなかった
ただ娘の年齢だけを数えていた
髪も結ばず壁に頭を押しつけ
物も食べずにいたとしても母は何の言葉もかけはしなかった
ただ外へ出ようとすると満身の力で引きずった
そうしてわたしをねじ伏せたのだった
恐怖と苦痛
命がけのさからいと呪いとの
あかるい夏の日と
ながい冬の夜との
恐怖と苦痛の中へ
母よ
あなたは娘を突っ放し
見て見ぬ振りをしていた
父のうしろにかくれ娘を見ようともしなかった
母とは何だろう
母は父の前に顔を赤らめたであろうに
父は若い男であり 母は若い女であったはずなのに
わたしには何があったか
そして過ぎてゆき
家つき娘の母と年よった娘との日ぐらし
ながい年月の夜明けと日の暮れ
母は死んだ
そして
どうしてわたしはこんなにかなしいのだろう
母は死の床に
田んぼを田んぼをといいながら
家と田んぼと
そのことばかりが何よりののぞみだったように
かぼそくやせた小さい姿だけが思い出される
「鈴子や」 母の叫び声がきこえる
わたしは母に死に別れてしまった
完