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TORENDIA

空知川の岸辺

本文約9,600字 ・ 読了時間 約20分

あらすじ(AIが作成しました)

札幌に滞在した青年は、土地選定の相談のため空知川の沿岸を目指す。北海道の荒涼とした自然の中で孤独を感じつつも、空知太の旅人宿で親切な主人と出会い、目的地である道庁官吏の小屋へと辿り着く。そこで官吏と開墾の困難さや人生について語り合い、深林の静寂の中で自身の生存と自然の威力を深く体感する。やがて開墾の目的は果たせなかったものの、心に残る冷厳な自然の光景を回想する。

國木田独歩

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一

余が札幌に滞在したのは五日間である、僅に五日間ではあるが余は此間に北海道を愛するの情を幾倍したのである。

我国本土の中でも中国の如き、人口稠密の地に成長して山をも野をも人間の力で平げ尽したる光景を見慣れたる余にありては、東北の原野すら既に我自然に帰依したるの情を動かしたるに、北海道を見るに及びて、如何で心躍らざらん、札幌は北海道の東京でありながら、満目の光景は殆ど余を魔し去つたのである。

札幌を出発して単身空知川の沿岸に向つたのは、九月二十五日の朝で、東京ならば猶ほ残暑の候でありながら、余が此時の衣装は冬着の洋服なりしを思はゞ、此地の秋既に老いて木枯しの冬の間近に迫つて居ることが知れるであらう。

目的は空知川の沿岸を調査しつゝある道庁の官吏に会つて土地の撰定を相談することである。然るに余は全く地理に暗いのである。且つ道庁の官吏は果して沿岸何れの辺に屯して居るか、札幌の知人何人も知らないのである、心細くも余は空知太を指して汽車に搭じた。

石狩の野は雲低く迷ひて車窓より眺むれば野にも山にも恐ろしき自然の力あふれ、此処に愛なく情なく、見るとして荒涼、寂寞、冷厳にして且つ壮大なる光景は恰も人間の無力と儚さとを冷笑ふが如くに見えた。

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