狐
本文約6,200字 ・ 読了時間 約13分
あらすじ(AIが作成しました)
月夜の晩、お祭へ向かう子供たちは、新しく下駄を新調した仲間の文六が狐に憑かれるという言い伝えを聞いて不安を抱く。祭りの最中、人形の不気味な動作に怯えた子供たちは、帰路で文六の咳を狐の鳴き声だと疑い、彼を恐れて突き放してしまう。一人で帰宅した文六は、母親に自分が狐になったらどうするのかと問いかける。母親は深い愛情を込めて、家族で狐となり共に生き抜く物語を語り、子の不安に寄り添う。
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一
月夜に七人の子供が歩いておりました。
大きい子供も小さい子供もまじっておりました。
月は、上から照らしておりました。子供たちの影は短かく地べたにうつりました。
子供たちはじぶんじぶんの影を見て、ずいぶん大頭で、足が短いなあと思いました。
そこで、おかしくなって、笑い出す子もありました。あまりかっこうがよくないので二、三歩はしって見る子もありました。
こんな月夜には、子供たちは何か夢みたいなことを考えがちでありました。
子供たちは小さい村から、半里ばかりはなれた本郷へ、夜のお祭を見にゆくところでした。
切通しをのぼると、かそかな春の夜風にのって、ひゅうひゃらりゃりゃと笛の音が聞えて来ました。
子供たちの足はしぜんにはやくなりました。
すると一人の子供がおくれてしまいました。
「文六ちゃん、早く来い」
とほかの子供が呼びました。
文六ちゃんは月の光でも、やせっぽちで、色の白い、眼玉の大きいことのわかる子供です。できるだけいそいでみんなに追いつこうとしました。
「んでも俺、おっ母ちゃんの下駄だもん」
と、とうとう鼻をならしました。なるほど細長いあしのさきには大きな、大人の下駄がはかれていました。
二
本郷にはいるとまもなく、道ばたに下駄屋さんがあります。
子供たちはその店にはいってゆきました。文六ちゃんの下駄を買うのです。文六ちゃんのお母さんに頼まれたのです。
「あののイ、小母さん」
と、義則君が口をとがらして下駄屋の小母さんにいいました。
「こいつのイ、樽屋の清さの子供だけどのイ、下駄を一足やっとくれや。あとから、おっ母さんが銭もってくるげなで」
みんなは、樽屋の清さの子供がよく見えるように、まえへ押しだしました。それは文六ちゃんでした。文六ちゃんは二つばかり眼ばたきしてつっ立っていました。
小母さんは笑い出して、下駄を棚からおろしてくれました。
どの下駄が足によくあうかは、足にあてて見なければわかりません。義則君が、お父さんか何ぞのように、文六ちゃんの足に下駄をあてがってくれました。何しろ文六ちゃんは、一人きりの子供で、甘えん坊でした。