TORENDIA
無題
夏目漱石
TORENDIA
無題
本文約5,800字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
建築家を目指していた著者が文学者となった経緯に触れつつ、工業専門家と文芸家の職業的な差異を論じる。機械技術を応用し普遍的な法則に従う工業に対し、文芸は個人の人格を根幹とする自由で主観的な営みであると述べる。また、既存の形式や法則を模倣するのではなく、各人が自己を自覚し、自らの人格を中心に新しい出発を試みるべきだと説き、個としての人間性の重要性を提唱する講演の内容を記録する。
速度
🎧 無題 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星
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私はこの学校は初めてで――エー来るのは初めてだけれども、御依頼を受けたのは決して初めてではありません。二、三年前、田中さんから頼まれたのです。その頃頼みに来て下さった方はもう御卒業なさったでしょう。それ以来十数回の御依頼を受けましたが、みんな御断りしました。断るのが面白いからではなく、やむをえないからで、このやむをえない事が度重なって御気の毒なので、その結果今日やって来ました。言わば根くらべで根がつきて出て来たようなしまつであります。だから面白い御話も出来兼ねます。今からとにかく一時間ばかり御話します。それ故、題なんかありません。
私は専門があなた方とは全然違っています。こんな機会でなければ顔を合わすことはありませんが、これでも私は工業の部門に属する専門家になろうとした事がありました。私は建築家になろうと思ったのです。何故っていうような問題ではない。けれどもついでだから話します。