TORENDIA
書の深淵
高村光太郎
TORENDIA
書の深淵
本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
書の鑑賞を通じて、文字の意味と純粋な造型美という二つの側面が複雑に絡み合うその特異な性質を論じる。書は抽象芸術でありながら、書き手の肉体や精神の力までを伝え、実用性と芸術性が密着する独自の領域を構築する。書かれた文字の意味に囚われることの難しさを考察しつつ、意味と造型が不即不離に存在する書特有の東洋的深淵と、そこに宿る比類なき魅力を綴る。
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🎧 書の深淵 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ
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書をみるのはたのしい。畫は見飽きることもあるが、書はいくら見てゐてもあきない。又いくどくり返してみてもそのたびに新らしく感ずる。
出土品の骨や角に彫つた原始形態のものもおもしろく、金石文も、六朝あたりの碑碣の拓本、唐宋の法帖の複製などもすばらしい。わけて肉筆ものを親しく見られる近代大陸や日本のものの興味は盡きない。
書は一種の抽象藝術でありながら、その背後にある肉體性がつよく、文字の持つ意味と、純粹造型の藝術性とが、複雜にからみ合つて、不可分のやうにも見え、又全然相關關係がないやうにも見え、不即不離の微妙な味を感じさせる。書を見れば誰でもその書かれた文字の意味を知らうとするが、それと同時に意味などはどうでもよい書のアラベスクの美に心をひかれる。しかもそのアラベスクがただの機械的、圖樣的のものでなくて、それを書いた人間の肉體、ひいてはその精神の力なり、性質なり、高さ低さ清さ卑しさまでが明らかにこちらに傳播してくるのである。一の字をひとつ紙に書かせて、それによつて占ひをする人があるといふことをきいてゐるが、なるほどこれも馴れたら或る程度までその人物の眞相を見ぬくことが出來るかもしれない。
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