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TORENDIA

党生活者

本文約65,300字 ・ 読了時間 約131分

あらすじ(AIが作成しました)

戦争中の金属工場「倉田工業」で働く労働者たちの日常と闘争を描く。過酷な労働環境と賃金に喘ぐ臨時工たちの間に、待遇改善を求める機運が芽生える。主人公と同志の須山、伊藤らは、労働者たちの不満を組織的な運動へと昇華させようと模索するが、会社側による突然の大量解雇という先制攻撃に直面する。極限の緊張感の中で、抑圧に抗う労働者たちの連帯と、挫折を次の闘争の糧に変えてゆく強い意志を浮き彫りにする。

小林多喜二

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一

洗面所で手を洗っていると、丁度窓の下を第二工場の連中が帰りかけたとみえて、ゾロ/\と板草履や靴バキの音と一緒に声高な話声が続いていた。

「まだか?」

その時、後に須山が来ていて、言葉をかけた。彼は第二工場だった。私は石鹸だらけになった顔で振りかえって、心持眉をしかめた。――それは、前々から須山との約束で、工場から一緒に帰ることはお互避けていたからである。そんな事をすれば、他の人の眼につくし、万一のことがあった時には一人だけの犠牲では済まないからであった。ところが、須山は時々その約束を破った。そして、「やアあまり怒るなよ」そんなことを云って、人なつこく笑った。須山はどっちかと云えば調子の軽い、仲々愛嬌のある、憎めないたちの男だったので、私はその度に苦笑した。が、今は時期が時期だし、私は強つい顔を見せたのである。それに今日これから新しいメンバーを誘って、何処かの「しるこ屋」に寄る予定にもなっていた……。が、フト見ると、ひょウきんな何時もの須山の顔ではない。私はその時私たちのような仕事をしているものゝみが持っているあの「予感」を突嗟に感じて、――「あ直ぐだ」と云って、ザブ/\と顔を洗った。

相手にそれと分ったと思うと須山は急に調子を変えて、「キリンでゞも一杯やるか」と後から云った。が、それには一応何時もの須山らしい調子があるようで、しかし如何にも取ってつけた只ならぬさがあった。それが直接に分った。

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