本文へ移動
TORENDIA

北海道の「俊寛」

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

十一月の北海道は雪に覆われ、出稼ぎ労働者たちは鉄道敷設や森林伐採の仕事を終えて小樽や函館へ追い出される。故郷へ帰る金もなく、極寒の中を彷徨う彼らは、島流しにされた俊寛のような境遇で停車場のストーブを求めて集う。帰郷する人々の姿を眺め、故郷の言葉を慕う彼らは、現地で生きる自由労働者から仕事を奪う敵として憎まれる。労働者同士の熾烈な争いは、結果として彼らを雇う側の資本家を喜ばせる状況を描く。

小林多喜二

速度
🎧 北海道の「俊寛」 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

十一月の半ば過ぎると、もう北海道には雪が降る。(私は北海道にいる。)乾いた、細かい、ギリギリと寒い雪だ。――チヤツプリンの「黄金狂時代」を見た人は、あのアラスカの大吹雪を思い出すことが出来る、あれとそのまゝが北海道の冬である。北海道へ「出稼」に来た人達は冬になると、「内地」の正月に間に合うように帰つて行く。しかし帰ろうにも、帰れない人達は、北海道で「越年(おつねん)」しなければならなくなるわけである。冬になると、北海道の奥地にいる労働者は島流しにされた俊寛のように、せめて内地の陸の見えるところへまでゞも行きたいと、海のある小樽、函館へ出てくるのだ。もう一度チヤツプリンを引き合いに出すが、「黄金狂」で、チヤツプリンは片方の靴を燃やしてしまつたので、藁か布切れかでトテモ大ツかく足を包んでいた。今いうその出てくる者達が、どれもそれとそつくり同じ「足」をしているのだ。

夏の間彼等は棒頭にたゝきのめされながら「北海道拓殖のために!」山を崩した。熊のいる原始林を伐り開いて鉄道を敷設した。――だが、雪が降ると、それ等の仕事が出来なくなる。彼等は用がなくなるのだ。そうなると、汽車賃もくれないで、オツぽり出される。小樽や函館へ出てくるのはこういう人達なのだ。

小林多喜二の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本