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TORENDIA

忘れ形見

本文約7,000字 ・ 読了時間 約15分

あらすじ(AIが作成しました)

船乗りになることを夢見る少年は、徳蔵おじと共に過ごした過去を回想する。北の山中で暮らす前、少年は古い城跡の番をしていた徳蔵に連れられ、狩猟場と化した城へ通った。そこで出会った高貴な奥さまは、孤独と憂いに沈みながらも、少年を深く慈しみ、愛情を注いでくれた。奥さまの秘められた過去や、病床で少年へ託した真の道を歩むよう諭す最期の教え、そしてその後、自立の時を迎える少年の決意を描く。

若松賤子

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🎧 忘れ形見 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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How kind, how fair she was, how good,

I cannot tell you. If I could,

You too would love her.

Procter : "The Sailor Boy."

ミス、プロクトルの“The Sailor Boy”という詩を読みまして、一方ならず感じました。どうかその心持をと思って物語ぶりに書綴って見ましたが、元より小説などいうべきものではありません。

あなた僕の履歴を話せって仰るの? 話しますとも、直き話せっちまいますよ。だって十四にしかならないんですから。別段大した悦も苦労もした事がないんですもの。ダガネ、モウ少し過ぎると僕は船乗になって、初めて航海に行くんです。実に楽みなんです。どんな珍しいものを見るかと思って……段々海へ乗出して往く中には、為朝なんかのように、海賊を平らげたり、虜になってるお姫さまを助けるような事があるかも知れませんからね。それから、ロビンソン、クルーソーみたように難船に逢って一人ッきり、人跡の絶えた島に泳ぎ着くなんかも随分面白かろうと考えるんです。

これまでは、ズット北の山の中に、徳蔵おじと一処にいたんですが、そのまえは、先の殿様ね、今では東京にお住いの従四位様のお城趾を番していたんです。足利時代からあったお城は御維新のあとでお取崩しになって、今じゃ塀や築地の破れを蔦桂が漸く着物を着せてる位ですけれど、お城に続いてる古い森が大層広いのを幸いその後鹿や兎を沢山にお放しになって遊猟場に変えておしまいなさり、また最寄の小高見へ別荘をお建てになって、毎年秋の木の葉を鹿ががさつかせるという時分、大したお供揃で猟犬や馬を率せてお下りになったんです。いらっしゃれば大概二週間位は遊興をお尽しなさって、その間は、常に寂そりしてる市中が大そう賑になるんです。お帰りのあとはいつも火の消たようですが、この時の事は、村のものの一年中の話の種になって、あの時はドウであった、コウであったのと雑談が、始終尽ない位でした。

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