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TORENDIA

やきもの讀本

本文約22,300字 ・ 読了時間 約45分

あらすじ(AIが作成しました)

やきものは時代を映し出す史的標本であり、器の形や土味、釉薬の技法にはその背景にある文化が宿る。本書は、やきものの鑑賞において時代を理解することの重要性を説き、日々の生活に身近な存在であるやきものの魅力を探求する。自身の知見を整理する勉強として、釉薬のある作品を主軸に据え、支那や朝鮮からの影響を受けつつ日本独自の発展を遂げた陶磁器の歴史と、それらを手で触れ愛でる楽しみ方を平易な言葉で綴る。

小野賢一郎

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【やきものの歴史】  やきものゝ歴史は古い、考古學の範圍にはいつてゆくと際限がない、また私のよく話し得るところでない。しかし、やきものが或時代の尖端をいつたものであつて、やきものゝ技を知る人が「瓦博士」などの稱呼で尊敬されてゐた時代のあつたことは確かである。我々は小學校の歴史で、百濟から瓦博士の來たことなど聞いた記憶がある。それが、ずつと後になると時代の流れに乘つて、權力者の保護を受け、氣位高くゐられた時もあれば、一介の勞働者扱ひされて、山間の賤が伏屋に土とロクロと共に起臥して、誰も顧みてくれぬ時代もあつた。

今や昭和の御代、國運隆々として起り、今まで骨董視され茶人の閑遊具と見られてゐたやきものゝ研究は日を追うて盛んになつてきた。全く今まで閑却されてゐたのが不思議であつたくらゐ。人間生を享けて乳房をはなれると共に茶わんに依つて食を得やうとし、二本の箸を執らうとする。一日三度は切つても切れない茶わんとの縁である。人間の周圍にあるもので、何から一番恩惠を蒙つてゐるかといへば植物だと或る林學博士が云つた。成程人間生活には木材といふものが多分にはいつてゐるであらう。家、机、たんす、膳―等々。鐵、銅等の鑛物等々。だが然し、やきものも亦人間生活に多量に取り入れられてゐることは爭へない。しかも此の燒物と人間との交渉は一種の魅惑力さへ伴つて相交感してゐるに於て――。

それは建築に心を使ふ人もあらう、着物に凝る人もあらう、しかし、四六時中生活の中にあつて、物質的に大きな犧牲を拂はないで樂しめるもの、やきものに如くはない。と、いへば、萬金の茶入や茶わんのことを持出されるかしれないが、それは本文のかゝはりしらぬことである。私は、これから、やきものに就て私の極めて貧しい知見から何事かを語らうとするのであるが、斷はるまでもなく私一個の考へであつて、決して人に教へやう、導かうなどゝいふ不逞な意圖は持つてゐない。私自身も勉強してみたいから、私の考へてゐることを文字に書き直してみる一つの「勉強」である。

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