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TORENDIA

猟師と薬屋の話

本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

貧しい猟師は、旅の薬屋に熊の胆を求められ、山へ向かう。山中で遊ぶ母子熊に出会い、その情愛に打たれて狩猟を断念する。一方、傲慢な別の猟師が熊に襲われた噂を耳にする。再訪した山中で傷ついた母熊と寄り添う子熊を目撃し、再び銃を向けられず帰宅する。困窮により鉄砲を売ろうとするが、事情を知った薬屋は猟師の慈悲深い心を称え、治療費を援助する。命を慈しむ猟師と、それを理解し支える人々の心の交流を描く物語である。

小川未明

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🎧 猟師と薬屋の話 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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村に一人の猟師が、住んでいました。もう、秋もなかばのことでありました。ある日知らない男がたずねてきて、

「私は、旅の薬屋でありますが、くまのいがほしくてやってきました。きけば、あなたは、たいそう鉄砲の名人であるということですが、ひとつ大きなくまを打って、きもを取ってはくださらないか。そのかわり、お金はたくさん出しますから。」といいました。

猟師は、貧乏をしていましたから、これはいい仕事が手にはいったと思いました。

「そんなら、くまをさがしに山へはいってみましょう。」

「どうぞ、そうしてください。このごろ、くまのいが、品切れで困っているのですから、値をよく買いますよ。」と、薬屋はいいました。

これをきいて、猟師は、よろこんで引き受けました。

村から、西にかけて、高い山々が重なり合っていました。昔から、その山にはくまや、おおかみが棲んでいたのであります。

猟師は、仕度をして、鉄砲をかついで山へはいってゆきました。霧のかかった嶺を越えたり、ザーザーと流れる谷川をわたって、奥へ奥へと道のないところをわけていきますと、ぱらぱらと落ち葉が体に降りかかってきました。

猟師は、しばらく歩いては耳をすまし、また、しばらく歩いては耳をすましたのです。そして、あたりに、猛獣のけはいはしないかと、ようすをさぐったのでした。

そのうちに、目の前に、大きな足跡を見つけました。

「あ、くまの足跡だ!」と、猟師は思わずさけびました。

これこそ、天が与えてくださったのだ。はやく打ちとめて家へしょって帰ろう。そうすればきもは、あの旅の薬屋に高く売れるし、肉は、村じゅうのものでたべられるし、皮は皮で、お金にすることができるのだ。こう思いながら、肩から、鉄砲をはずして、弾丸をこめて、その足跡を見失わないようにして、ついてゆきました。

裏山は、雲が切れて、秋の日があたたかそうに照らしていました。そして、二、三十メートルかなたに、大きなとちの木があって、熟した実がぶらさがっていましたが、その下に黒いものがしきりに動いているのを見つけたのです。

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