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TORENDIA

臨終まで

本文約4,900字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

長年病魔と闘う息子を抱える母親は、医師の助言を受けながら懸命に看護を続ける。心臓嚢炎と診断され、氷で心臓を冷やす治療が行われる中、症状は一進一退を繰り返す。食事の好みが変化し、浮腫が全身に広がるなど病状が悪化していく様子を、母親は不安を隠しながら見守る。弟たちの訪問に安らぎを覚えつつも、呼吸困難と痛みに苦しむ息子のため、母親は薬や酸素吸入で支え続け、最期のときまで母子で寄り添いながら闘病の日々を過ごす。

梶井久

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🎧 臨終まで / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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彼は永年病魔と闘いました。何とかしてその病魔を征服しようと努力しました。私も又彼を助けて、共にその病魔を斃そうと勉めましたが、遂に最後の止めを刺されたのであります。

本年二月二十六日の事です。何だか身体の具合が平常と違ってきて熱の出る時間も変り、痰も出ず、その上何処となく息苦しいと言いますから、早速かかりつけの医師を迎えました。その時、医師の言われるには、これは心臓嚢炎といって、心臓の外部の嚢に故障が出来たのですから、一週間も氷で冷せばよくなりますとのことで、昼夜間断なく冷すことにしました。

其の頃は正午前眼を覚しました。寝かせた儘手水を使わせ、朝食をとらせました。朝は大抵牛乳一合にパン四分の一斤位、バターを沢山付けて頂きます。その彼へスープ一合、黄卵三個、肝油球。昼はお粥にさしみ、ほうれん草の様なもの。午後四時の間食には果物、時には駿河屋の夜の梅だとか、風月堂の栗饅頭だとかの注文をします。夕食は朝が遅いから自然とおくれて午後十一時頃になる。此時はオートミルやうどんのスープ煮に黄卵を混ぜたりします。うどんは一寸位に切って居りました。

食事は普通人程の分量は頂きました。お医者様が「偉いナー私より多いがナー」と言われる位で有りました。二十日ばかり心臓を冷やしている間、仕方が無い程気分の悪い日と、また少し気分のよい日もあって、それが次第に楽になり、もう冷やす必要も無いと言うまでになりました。そして、時には手紙の三四通も書く事があり、又肩の凝らぬ読物もして居りました。

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