TRENDIA CLASSIC

幕末維新懐古談

高村光雲

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早速彫らされることになる――

この話はしにくい。が、まず大体を話すとすると、最初は「割り物」というものを稽古する。これはいろいろの紋様を平面の板に彫るので工字紋、麻の葉、七宝、雷紋のような模様を割り出して彫って行く。これは道具を切らすまでの手続き。それが満足に出来るようになると、今度は大黒の顔です。これがなかなか難儀であって、木の先へ大黒天の顔を彫って行くのであるが、円満福徳であるべきはずの面相が馬鹿に貧相になったり、笑ったようにと思ってやると、かえって泣いたような顔になる。なかなか旨く行かない。繰り返し繰り返し、旨く行くまで彫らされる。彫るものの身になると、真に辛い。肥えさせればぼてるし、瘠せさせれば貧弱になる。思うようには到底ならないのを、根気よく毎日毎晩コツコツとやっている中に、どうやら、おしまいには大黒様らしいものが出来て来ます。

と、今度は蛭子様――これは前に大黒の稽古が積んで経験があるから、いくらか形もつく。大黒が十のものなら五つで旨く行って、まずそれでお清書は上がるのです。

すると、三番目の稽古に掛かるのが不動様の三尊である。不動様は今日でもそうであるが、その頃は、一層成田の不動様が盛んであったもので、不動の信者が多い所から自然不動様が流行っている。不動様はまず矜羯羅童子から始めます。これは立像で、手に蓮を持っている。次が制迦童子、岩に腰を掛け、片脚を揚げ、片脚を下げ、捻り棒を持っている。この二体が出来て来ると、次は本体の不動明王を彫るのです。

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