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TORENDIA

黄金の枕

本文約3,000字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

漂泊の旅を続ける書生の辛道度は、飢えを凌ぐために立ち寄った豪壮な屋敷で、秦の閔王の娘と名乗る美しい女に出会う。彼女との交流を経て、道度は別れ際に黄金の枕を授けられる。その足で秦の国へ向かった道度は、市場で枕を売ろうとしたところを王妃に見初められる。王妃が枕の来歴を問うと、それは二十三年前に亡くなった王女の持ち物であった。道度は王妃の車に随い、不思議な巡り合わせで王宮へと導かれていく。

田中貢太郎

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🎧 黄金の枕 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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辛道度は漂泊の旅を続けていた。着物は薄く懐中は無一物で、食物をくれる同情者のない時には水を飲んで餓えを凌ぎ、宿を貸してくれる処がなければ、木の葉を敷いて野宿をした。そうした窮乏の中にあっても、彼は決して気を腐らさなかった。彼の前途には華やかな着物を着た幸福が見えていた。要するに彼は若かった。

雍州城の西門から五里ぐらい北の方へ往った。侘しい夕方であった。道度はその日も朝から水以外に何も口にしていないので、物をくれそうな素封家の家を物色して歩いた。畑の中や森陰に当って、民家の屋根がぼつぼつ見えていたが、入って往こうと思うような家はなかった。しかし、そんな目に毎日のように逢っている彼は、別にあわてもしなければ悲観もしなかった。今にどこかいい処が見つかるだろうぐらいの気もちで、平気な顔をしてのそのそと歩いた。

ちいさな野川の土橋を渡って、雑木の黄葉した台地の裾について曲って往くと、庁館がまえの大きな建物が見えてきた。

「やっといい処が見つかったぞ」

道度はその門の方へ往った。門口に女中らしい女が立っていた。あたかも彼が往くのを待っていてくれるように。

道度は女の前へ往った。女は人懐かしそうな顔をしていた。

「私は隴西の書生で辛道度という者ですが、金がなくなって食事に困っております、御主人にお願いして食事をさせていただきたいのですが、お願いしてくれませんか」

「あ、御飯を、では、ちょっと、待っていらっしゃい、願ってあげますから」

女は気軽く言って門の中へ入って往った。道度は石に腰を掛けて待っていた。

間もなくかの女が引返してきた。

「そうした方なら、今晩泊めてあげてもいいとおっしゃいますから、お入りなさい、ここの御主人は御婦人ですよ」

道度は礼を言いながらその後に従いて家の中へ入った。赤く塗った柱、緑色の壁などが彼にいい気もちを起さした。

「御主人は、こちらにおいでなさいます」

女は扉を開けた。道度はきまりが悪いのでもじもじしながら入った。

室の真中には、体のほっそりした綺麗に着飾った女が牀に腰を掛けていた。室の隅ずみには雲母の衝立がぎらぎら光っていた。道度は遠くの方からおじぎをした。

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