荷花公主
本文約6,300字 ・ 読了時間 約13分
あらすじ(AIが作成しました)
西湖のほとりで蓮の精である美しい女と出会った秀才の彭徳孚は、夜ごと彼女の住む水晶城へ通うようになる。女の正体は水仙王の娘であり、彭がかつて網から逃がした蟹の王である判官の庇護下にあった。その後、雷峰塔の蛇に命を狙われる危機を女に救われるが、人間と精霊の禁忌に触れたことで女は別の家への転生を余儀なくされる。本作は、二人の愛の軌跡と、引き裂かれる別れまでを描く。
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南昌に彭徳孚という秀才があった。色の白い面長な顔をした男であったが、ある時、銭塘にいる友人を訪ねて行って、昭慶寺という寺へ下宿していた。
その彭は、ある日西湖の縁を歩いていた。それは夏の夕方のことで、水の中では葉を捲いていた蓮の葉に涼しい風が吹いて、ぎらぎらする夕陽の光も冷たくなっていた。聖因寺の前へ行ったところで、中から若い眼のさめるような女が出てきた。十七八に見える碧い着物を着た手足の細そりした女で、一人の老婆が後からきていた。その女の眼はちらと彭の顔へきた。
「あなたは、何所からいらっしたのです」
彭が声をかけると女は恥かしそうに顔を赤らめたが、そのままその顔を老婆の方へやって、
「婆や、早く行きましょうよ」
と言ってからむこうのほうへ歩いた。彭は引きずられるように老婆の後から随いて行った。
すこし行くと女は斜に後ろを振り返って、老婆の横から彭を覗くようにした。女の気配に彭は顔をあげたが、その拍子に女の視線と視線が合った。女はきまり悪そうにあわてて前をむいて歩いた。
女の眼の色に親しみを見出した彭は、非常に気が強くなってそのまま随いて行ったが、女も老婆も不思議に足が早いので、路の曲っている所などでは、ときどき二人の姿を見失いそうになった。
彭はすこしも油断することができなかった。孤山の麓にある水仙廟がすぐ眼の前に見えてきた。もう陽が入って西の空が真赤に夕映えていた。女と老婆は水仙廟の手前から廟に沿うて折れて行った。その二人の顔に夕映の色がうっすらと映っていた。
みるみる女と老婆は水仙廟の後ろへ行ったが、そのまま見えなくなった。彭は女の姿が見えなくなると、小走りに走って廟後へ着くなり、ぴったり走ることを止めて、そのまわりに注意して廻ったが、何所へ行ったのかもう影も見えなかった。
彭はしかたなしに其所へ立ち止った。いつの間にか夕映も消えて四辺が微暗くなった中に、水仙廟の建物が黒い絵になって見えていた。
「おい、彭君じゃないか」
だしぬけに声をかけるものがあった。彭は吃驚して我に返った。それは霊隠寺へ行っていた友人であった。
「ああ君か」
「君は、いったい此所で何をしているのだ」