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TORENDIA

瞳人語

本文約1,900字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

長安に住む軽薄な才子・方棟は、郊外で出会った美しい女が乗る車を執拗に追い回す。侍女に砂を投げつけられ目を痛めた彼は、やがて眼球に不気味な渦巻き状の翳が生じ視力を失う。改心して読経に励む中、方棟は自身の目の中に住まう豆のような小人の会話を耳にするようになる。やがて小人たちが瞳に門を開け閉めする不思議な現象が起き、彼は視力を取り戻すが、その瞳には奇妙な変化が残る。この作品は、因果応報と不可思議な体験を綴る。

田中貢太郎

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🎧 瞳人語 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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長安に、方棟という男があった。非常な才子だといわれていたが、かるはずみで礼儀などは念頭におかなかった。路で歩いている女でも見かけると、きっと軽薄にその後をつけて往くのであった。

清明の節の前一日のことであった。たまたま郊外を歩いていると、一つの小さな車がきた。それは朱の色の戸に繍のある母衣をかけたもので、数人の侍女がおとなしい馬に乗って蹤いていた。その侍女のなかに小さな馬に乗った容色のすぐれた女があったので、方棟は近くへ寄って往って覗いた。

見ると車の帷が開いていて、内に十六七の女郎がすわっていたが、紅く化粧をした顔の麗しいことは、今まで見たことのない美しさであったから、方棟はふらふらとなって我を忘れ、後になり前になりして従いて往った。そしてすこし往ったところで、女郎は侍女を車の側近く呼んで言った。

「わたしに戸をおろしてくださいよ、何処かの狂人でしょ、さっきから窺いてるのよ」

そこで侍女は簾をおろして、怒った顔で方棟の方をふりかえって言った。

「これは、芙蓉城の七郎さまの奥様が、お里がえりをなさるところでございますよ、田舎女を若い衆がのぞくようなことをせられては困ります」

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