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TORENDIA

三人の相馬大作

本文約32,100字 ・ 読了時間 約65分

あらすじ(AIが作成しました)

奥州街道の宿で相馬大作を追うと語る南町奉行付の侍・女狩右源太は、大作本人や影武者の存在に翻弄される。一方、大作と関良輔は津軽公を討つべく火術を駆使し、紙製の大砲を据えて行列を待ち構える。宿場や街道を舞台に、仇討ちの使命を帯びる者と大義を抱く者の思惑が交錯し、大作の動向を巡って周囲の人々が騒ぎ立てる中、右源太もまた自身の偽りが露呈し、かつて討った男の遺児たちによる報復の対峙へと追い込まれていく。

直木三十五

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一

「何うも早や――いや早や、さて早や、おさて早や、早野勘平、早駕で、早や差しかかる御城口――」

お終いの方は、義太夫節の口調になって、首を振りながら

「何うも、早や、奥州の食物の拙いのには参るて」

赤湯へ入ろうとする街道筋であったが、人通りが少かった。侍は、こう独り言をいいながら

「早や、暮れかかる入相の」

と、口吟んで、もう一度、首を振ってみたが、村の入口に、人々の――旅の、客引女らしいのが立っているのを見ると、侍らしくなって歩き出した。

少し、襟垢がついていて、旅疲れを思わせる着物であるが、平島羽二重の濃紫紺、黒縮緬の羽織に、絹の脚絆をつけていた。

「お泊りなら、すずかなお離れが、空いてるよう」

「お武家衆様、泊るなら、こっちへ」

女が口々に呼びながら、小走りに、近づいたが、さすがに、商人にするように、袖を掴まなかった。

「ええ、お娘子を取りもつで。江戸のお武家衆や」

侍は笑って

「江戸と、何うして、判るか」

「ええ、身なりがに――さ、寄って、泊って行かっせ」

勇敢な一人が、羽織をつかんだ。

「お湯も、けれえだから」

「よし、泊ってつかわそう」

「そりゃまあ」

女は、先に立って

「泊りだよう」

と、叫んだ。番頭が上り口へ手を突いて、お叩頭[#ルビの「じぎ」は底本では「じき」]をした。

「厄介になるぞ、何程かの」

「へい、二十五文が、定ぎめで御座ります」

「よかろう」

「手前は、浪花講で御座ります、へい、おすすぎーッ」

「ひゃあーッ」

二

浪宿の慣らわしとして、三人の相客があった。侍は、床の間を背にして、固い褞衣の中から、白い手を出して、煙草を喫いつつ

「南町奉行附、直参、じゃが、ちと、望みがあっての」

「南町奉行附と申しますと――え、何かお召捕用で?」

「ま、そんなところだの」

廊下に、足音が聞えると、障子が、開いて十二、三の女の子が、三人

おばあ子、来るかやあと

鎮守の外んずれまで

出てみたば

と、叫んで、踊りながら、入ってきた。

「うるさい。もうええ」

客の一人が手を振った。

おばこ来もせで相馬の大作なんぞいかめ面。

「出てくれ」

と、一人が、一文銭を、抛出した。女の子は、次の部屋へ唄って行った。

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