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TORENDIA

防火栓

本文約3,600字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

ロオデンシヤイド市に新設された鉄骨の大曲馬場では、元日の初興行に多くの観客が押し寄せる。昼の部が終わり退場しようとする客と、夜の部を待つ客が唯一の入口で衝突し、群衆は身動きが取れない混雑に陥る。警察の制止も効かず、混乱が頂点に達した時、道化師トロツテルが防火栓の使用を提案する。放水により群衆は解散し難を逃れるが、後に興行主は設備の不備を理由に多額の賠償を命じられる。本書は、熱狂する大衆の姿と騒動の顛末を皮肉を込めて描く。

ゲオルヒ・ヒルシユフエルド Georg Hirschfeld

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🎧 防火栓 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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度度噂のあつた事が、いよ/\実行せられると聞いた時、市中の人民は次第に興奮して来た。これまで毎年ロオデンシヤイド市に来る曲馬師の組は、普通の天幕の中で興行したのだが、それはもう罷められる。旅興行が定興行になる。お寺のすぐ脇のマリアの辻には、鉄骨の大曲馬場が立つ。五千人入である。やれ/\安心だ。さうなれば、誰でも往かれる。そのうち番附が出た。どの番組が早く見たいと云はうか、どうも気が迷つてならない。水藝をする白熊十七匹も、アラビア沙漠の十匹の牝馬も火踊をするコブラ嬢も、音楽のわかる道化師トロツテルも、どれも/\見たい。

一月一日の場所開きには、二興行ある。一つは午後三時に始まるので、今一つは午後七時に始まるのである。札はどちらも疾つくに売り切れた。これまで度度難儀に逢つて来た市立劇場の座主は、妬ましげに此人気を見てゐる。いやはや。己なんぞはワグネルを聞せて遣つたり、イブセンを見せて遣つたりする。一歩進んでバアナアド・シヨオをも見せて遣る。所が人の見たがるのは白熊や手長猿だ。ロオデンシヤイド市の物のわかる連中に来て貰はうと思つて、何遍も骨を折つて見た。所が誰も来てはくれない。それがどうだ。今あの曲馬になら、人波を打つて押し寄せる。しかもなんと云ふ景気だ。

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