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TORENDIA

からすうりの花と蛾

本文約8,700字 ・ 読了時間 約18分

あらすじ(AIが作成しました)

庭で繁殖するからすうりの生態と、夜になるとその花に集まる蛾の習性を観察する。著者は、光の変化に応じて自動的に開花する植物の仕組みや、蛾の飛行能力を光度計になぞらえて論じる。さらに、こうした自然界の精緻な能力と比較して、機械文明に依存し、災害や戦時の危機管理に対して無防備になった現代人の脆弱さを指摘し、人間が自然に対して抱く傲慢さを戒め、より謙虚に自然から学ぶ姿勢の必要性を綴る。

寺田寅彦

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ことしは庭のからすうりがずいぶん勢いよく繁殖した。中庭の四つ目垣のばらにからみ、それからさらにつるを延ばして手近なさんごの木を侵略し、いつのまにかとうとう樹冠の全部を占領した。それでも飽き足らずに今度は垣の反対側のかえでまでも触手をのばしてわたりをつけた。そうしてそのつるの端は茂ったかえでの大小の枝の間から糸のように長くたれさがって、もう少しでその下の紅蜀葵の頭に届きそうである。この驚くべき征服欲は直径わずかに二三ミリメートルぐらいの細い茎を通じてどこまでもと空中に流れ出すのである。

毎日おびただしい花が咲いては落ちる。この花は昼間はみんなつぼんでいる。それが小さな、かわいらしい、夏夜の妖精の握りこぶしとでもいった格好をしている。夕方太陽が没してもまだ空のあかりが強い間はこのこぶしは堅くしっかりと握りしめられているが、ちょっと目を放していてやや薄暗くなりかけたころに見ると、もうすべての花は一ぺんに開ききっているのである。スウィッチを入れると数十の電燈が一度にともると同じように、この植物のどこかに不思議なスウィッチがあって、それが光のかげんで自働的に作用して一度に花を開かせるのではないかと思われるようである。ある日の暮れ方、時計を手にして花の咲くのを待っていた。縁側で新聞が読めるか読めないかというくらいの明るさの時刻が開花時で、開き始めから開き終わりまでの時間の長さは五分と十分の間にある。つまり、十分前には一つも開いていなかったのが十分後にはことごとく満開しているのである。実に驚くべき現象である。

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