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TORENDIA

アインシュタイン

本文約12,200字 ・ 読了時間 約25分

あらすじ(AIが作成しました)

アルベルト・アインシュタインの科学的功績と人物像を綴る。抽象的な時空概念を数学的に再構築して物理学を革新したその知性を解説し、一般社会で注目を集める経緯や、迫害に対しても冷静で寛容な姿勢を示す人柄を描く。また、科学者としての非凡な洞察力や、技術文明に対する慎重な視点を紹介し、さらに研究の歩みと今後の展望に触れることで、物理学の歴史を切り拓く学者の面影をスケッチのように浮かび上がらせる。

寺田寅彦

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一

この間日本へ立寄ったバートランド・ラッセルが、「今世界中で一番えらい人間はアインシュタインとレニンだ」というような意味の事を誰かに話したそうである。この「えらい」というのがどういう意味のえらいのであるかが聞きたいのであったが、遺憾ながらラッセルの使った原語を聞き洩らした。

なるほど二人ともに革命家である。ただレニンの仕事はどこまでが成効であるか失敗であるか、おそらくはこれは誰にもよく分らないだろうが、アインシュタインの仕事は少なくも大部分たしかに成効である。これについては世界中の信用のある学者の最大多数が裏書をしている。仕事が科学上の事であるだけにその成果は極めて鮮明であり、従ってそれを仕遂げた人の科学者としてのえらさもまたそれだけはっきりしている。

レニンの仕事は科学でないだけに、その人のその仕事の遂行者としてのえらさは必ずしも目前の成果のみで計量する事が出来ない。それにもかかわらずレニンのえらさは一般の世人に分りやすい種類のものである。取扱っているものが人間の社会で、使っているものが兵隊や金である。いずれも科学的には訳の分らないものであるが、ただ世人の生活に直接なものであるだけに、事柄が誰にも分りやすいように思われる。

これに反してアインシュタインの取扱った対象は抽象された時と空間であって、使った道具は数学である。すべてが論理的に明瞭なものであるにかかわらず、使っている「国語」が世人に親しくないために、その国語に熟しない人には容易に食い付けない。それで彼の仕事を正当に理解し、彼のえらさを如実に估価するには、一通りの数学的素養のある人でもちょっと骨が折れる。

到底分らないような複雑な事は世人に分りやすく、比較的簡単明瞭な事の方が却って分りにくいというおかしな結論になる訳であるが、これは「分る」という言葉の意味の使い分けである事は勿論である。

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