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TORENDIA

化け物の進化

本文約10,000字 ・ 読了時間 約20分

あらすじ(AIが作成しました)

人間と自然の接触から生まれた化け物は、宗教や科学、芸術の世界を横断する人間文化の傑作である。自然界の不可解な現象を説明する作業仮説として、古くは雷神、現代では科学上の原子や電子へと姿を変えつつ、両者はともに人間の創作である。本書は、化け物の歴史や他民族間の伝承の類似性を考察し、科学が発展しても神秘的な自然に対する畏敬の念を持ち続けることの重要性を説く。科学の本質を探究する営みを、不思議への憧憬という観点から捉え直す一編である。

寺田寅彦

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人間文化の進歩の道程において発明され創作されたいろいろの作品の中でも「化け物」などは最もすぐれた傑作と言わなければなるまい。 化け物もやはり人間と自然の接触から生まれた正嫡子であって、その出入する世界は一面には宗教の世界であり、また一面には科学の世界である。 同時にまた芸術の世界ででもある。

いかなる宗教でもその教典の中に「化け物」の活躍しないものはあるまい。 化け物なしにはおそらく宗教なるものは成立しないであろう。 もっとも時代の推移に応じて化け物の表象は変化するであろうが、その心的内容においては永久に同一であるべきだと思われる。

昔の人は多くの自然界の不可解な現象を化け物の所業として説明した。 やはり一種の作業仮説である。 雷電の現象は虎の皮の褌を着けた鬼の悪ふざけとして説明されたが、今日では空中電気と称する怪物の活動だと言われている。 空中電気というとわかったような顔をする人は多いがしかし雨滴の生成分裂によっていかに電気の分離蓄積が起こり、いかにして放電が起こるかは専門家にもまだよくはわからない。 今年のグラスゴーの科学者の大会でシンプソンとウィルソンと二人の学者が大議論をやったそうであるが、これはまさにこの化け物の正体に関する問題についてであった。 結局はただ昔の化け物が名前と姿を変えただけの事である。

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