TRENDIA CLASSIC
化け物の進化
寺田寅彦
1 / 15
人間文化の進歩の道程において発明され創作されたいろいろの作品の中でも「化け物」などは最もすぐれた傑作と言わなければなるまい。 化け物もやはり人間と自然の接触から生まれた正嫡子であって、その出入する世界は一面には宗教の世界であり、また一面には科学の世界である。 同時にまた芸術の世界ででもある。
いかなる宗教でもその教典の中に「化け物」の活躍しないものはあるまい。 化け物なしにはおそらく宗教なるものは成立しないであろう。 もっとも時代の推移に応じて化け物の表象は変化するであろうが、その心的内容においては永久に同一であるべきだと思われる。
昔の人は多くの自然界の不可解な現象を化け物の所業として説明した。 やはり一種の作業仮説である。 雷電の現象は虎の皮の褌を着けた鬼の悪ふざけとして説明されたが、今日では空中電気と称する怪物の活動だと言われている。 空中電気というとわかったような顔をする人は多いがしかし雨滴の生成分裂によっていかに電気の分離蓄積が起こり、いかにして放電が起こるかは専門家にもまだよくはわからない。 今年のグラスゴーの科学者の大会でシンプソンとウィルソンと二人の学者が大議論をやったそうであるが、これはまさにこの化け物の正体に関する問題についてであった。 結局はただ昔の化け物が名前と姿を変えただけの事である。
寺田寅彦の他の作品
TRENDIA CLASSIC
車
寺田寅彦
車
寺田寅彦 ・ 約3分
TRENDIA CLASSIC
高知がえり
寺田寅彦
高知がえり
寺田寅彦 ・ 約8分
TRENDIA CLASSIC
相撲と力学
寺田寅彦
相撲と力学
寺田寅彦 ・ 約2分
TRENDIA CLASSIC
根岸庵を訪う記
寺田寅彦
根岸庵を訪う記
寺田寅彦 ・ 約12分
TRENDIA CLASSIC
アインシュタイ
ン
寺田寅彦
アインシュタイン
寺田寅彦
TRENDIA CLASSIC
アインシュタイ
ンの教育観
寺田寅彦
アインシュタインの教育観
寺田寅彦
TRENDIA CLASSIC
赤
寺田寅彦
赤
寺田寅彦
TRENDIA CLASSIC
秋の歌
寺田寅彦
秋の歌
寺田寅彦
TRENDIA CLASSIC
浅草紙
寺田寅彦
浅草紙
寺田寅彦
TRENDIA CLASSIC
天河と星の数
寺田寅彦
天河と星の数
寺田寅彦
TRENDIA CLASSIC
浅間山麓より
寺田寅彦
浅間山麓より
寺田寅彦
TRENDIA CLASSIC
嵐
寺田寅彦
嵐
寺田寅彦