本文へ移動
TORENDIA

油絵新技法

本文約76,000字 ・ 読了時間 約152分

あらすじ(AIが作成しました)

油絵の技法について、著者が画家を目指す若者へ向けた心構えや、近代日本における表現のあり方を綴る。技術の習得は重要だが、それは芸術の目的ではなく、あくまで手段であると説く。さらに、ガラス絵製作の順序を通じて通常の絵画とは異なる技法的な特性を紹介しつつ、現代日本の風景や生活を油絵の中にいかに取り込み、表現していくべきかという課題について独自の考察を述べる。

小出楢重

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 95

序言

日本の油絵も、ようやくパリのそれと多くの距離を有たぬようにまで達しつつある事は素晴らしき進歩であると思う。だがしかし、新らしき芸術の颱風は常に巴里に発生している。まだ日本は発祥の地ではあり得ない事は遺憾であるが、それはまだ新らしき日本が絵画芸術のみならずあらゆる文化が今急速に新らしく組み立てられつつ動いて行く工事場の混乱を示している最中である。今あらゆる新らしきものを速かに吸収消化する能力こそ、若き日本人の生命であるともいえる。だが新らしき日本へ新らしき花を発祥させるには根のない木を植えてはいけない。一本の松は地下にどれだけ驚くべき根を拡げているかを調べてみるがいい。芸術はカフェーの店頭を飾るべき紙製の桜であってはならない。しかしややもすると、新日本文化は紙の桜となりがちである。それが最も気にかかる事だ。

この書は、技法そのものについて、例えば新らしき芸術を作るには砂糖幾瓦、メリケン粉、塩何匁、フライパンに入れて、といった風の調理法を説かなかった。あらゆる画家の修業は図書館では行わないものである。

彼らはミュゼーと、そしてモデルと、石膏と、風景から、伝心的に技法を悟ったに過ぎないと私は思っている。そこで、私は現代にあって、最も困難な絵画芸術に志す若き人たちに対して、この工事中の混乱に向うべき心構えについて、いささか私の考えを不完全ながら述べたつもりである。そして、それから先きの仕事は私の関する処でない。

昭和五年九月

[#改頁]

油絵新技法

1 序言

枠へ如何にしてカンバスを張るかパレットは如何に使用するか、等の如き説明はかなり多くの画法の書物に説かれているようだから、私はさような道具類の説明をなるべく避けて、ここには主として、専門に本心に油絵を描き出そうとする人たちへ、絵の技法というものについての心構えといった風の事と、それから現在の世の中に生きているわれわれの心を生かして行くのに最も適当である処の近代の技法について少々述べて見たいと思うのである。

小出楢重の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本