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TORENDIA

無題(五)

本文約660字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

森鴎外全集第二巻に収録された、明治三十年代の作家たちによる小説の合評を読み解く。かつての文壇における合評のあり方を通じ、明治文学が辿った変遷や現代との価値観の差異を考察する。また、当時の批評が個々の作家の作風に与えた影響や危険性について論じる。特に泉鏡花の変遷や蒲原有明の詩業に触れながら、批評という営みが持つ鋭さと重みについて思考を深める内容を収める。

宮本百合子

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鴎外全集 第二巻 雲中語 を読む。

第一感じること。これは、明治三十年、新小説、文芸倶楽部などに発表された小説を、鴎外、露伴、緑雨、紅葉、思軒などがよって合評したものだ。現代の新潮合評のようなものか。然し三十年と云えば、今からたった二十九年、足かけ三十年ばかりの昔だのに、何と云う過古が今日の私共には感じられるだろう。明治の文学が、どんな短い年数の間に幾多の変遷を経、外国文学の影響を受けて居るかがわかる。その時代の作家と今日の作家との違いは、只年代の差違のみではない。生れ更らなければなりそうもない考え方、感じ方、見かたの違いがある。例えば、紅葉が今日まで生きて居たとし、あの作風からどう変化した彼を想像出来得るだろう。鏡花がこの頃雲中語で、源三位に(多分緑雨だろう)これは落咄さと片づけられた化鳥を書いて居る。人間氏が「余程変てこに化けて来たようだ。この上はどこまで化けるか分らぬ。どうか早く本体を顕して真人間に戻って貰いたいものだ」と評して居る。真人間のすきな人間氏よ、安心なさい。鏡花は完全に化けぬいた。ユニークな天才と化け得て一九二五年の文壇に生彩を放って居るから。

これについて当時の批評と云うものについて感あり。所謂一流の人々の批評にも、どんな危険性が含まれて居るかということについて。鏡花、よくも化け抜いた! いつぞや中央公論新年号に出た日夏耿之介氏の明治詩史中、蒲原有明に対する評とともに、忘れ難い印象だ。「有明は自己の渋晦さをより明に意識しようとはせず、評言に動かされ、渋晦ならざらんとしたところに彼の破滅があった」と。

完

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