TRENDIA CLASSIC
二つの鞄
夢野久作
1 / 1
小さな鞄と大きな鞄と二つ店に並んでおりました。大きな鞄はいつも小さな鞄を馬鹿にして、
「お前なんぞはおれの口の中に入ってしまう」
と冷かしました。
二つの鞄は同じ時に同じ人に買われて、同じ家に行きました。すると小さな鞄の中にはお金や何か貴いものが詰められて、人間に大切に抱えられて行きます。大きな鞄はあべこべにつまらないものばかり詰められて、荷車に積まれたり投げ飛ばされたりしておりました。小さな鞄は大威張りで、
「大きな鞄の意気地なし」
と笑っておりました。大きな鞄は大層口惜しがって、自分をいじめる人間を怨んでおりました。
ある日大火事があってこの家の人が逃げ出す時、衣服と一緒に小さな鞄を大きな鞄の中に入れて逃げ出しました。大きな鞄はここで敵を取ってやろうと思って、火事が済んだあとで人が開けようとすると、口をしっかりと閉じて中の小さな鞄を出すまいとしました。人間は大層困っていろいろやってみましたが、どうしても開きません。
「この鞄は駄目だよ。口を開かなきゃ鞄の役に立ちはしない。中の小さな鞄が入り用だからしかたがない。こうしてやろう」
と言いながら横腹を切り破ってしまいました。
夢野久作の他の作品
TRENDIA CLASSIC
青水仙、赤水仙
夢野久作
青水仙、赤水仙
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
キキリツツリ
夢野久作
キキリツツリ
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
犬と人形
夢野久作
犬と人形
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
お菓子の大舞踏
会
夢野久作
お菓子の大舞踏会
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
黒い頭
夢野久作
黒い頭
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
クチマネ
夢野久作
クチマネ
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
白椿
夢野久作
白椿
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
章魚の足
夢野久作
章魚の足
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
どろぼう猫
夢野久作
どろぼう猫
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
ドン
夢野久作
ドン
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
虫の生命
夢野久作
虫の生命
夢野久作
TRENDIA CLASSIC
若返り薬
夢野久作
若返り薬
夢野久作