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TORENDIA

赤旗事件の回顧

本文約5,600字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

神田錦町の錦輝館で開催された出獄歓迎会に集まった社会主義者たちは、会終了後に赤旗を掲げてデモ行進を行う。警察官との激しいもみ合いの末、多くの者が検挙され、留置場や監獄を経て裁判で実刑判決を受ける。本書は、この赤旗事件の経緯や当時の社会主義運動の分派対立、および事件後に運動が頓挫し無政府主義的傾向が強まっていく過程を、著者の視点から回顧・記録する。

堺利彦

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🎧 赤旗事件の回顧 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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回顧すれば、すでにほとんど二〇年の昔である。何かそれについて書けと言われる。今さらながら自分の老いを感ぜざるをえない。昔語りは気恥ずかしくもある。しかし、それも一興として、あるいは多少の参考として、読んでくれる人も無いではあるまい。しばらく昔の夢に遊んでみる。

神田錦町の錦輝館(きんきかん)の二階の広間、正面の舞台には伊藤痴遊君が着席して、明智光秀の本能寺襲撃か何かの講演をやってる。それに聞きほれたり、拍手したり、喝采したり、まぜかえしたり、あるいは身につまされた感激の掛け声を送ったりしている者が、婦人や子供をまじえて五、六十人、それが当時の社会主義運動の常連であった。

この集会は、山口孤剣(やまぐちこけん・義三)君の出獄歓迎会であった。当時の社会主義運動には「分派」の争いが激しく、憎悪、反感、罵詈、嘲笑、批難、攻撃が、ずいぶんきたならしく両派の間に交換されていた。しかし山口君は、その前年皆が大合同で日刊平民新聞をやっていたころから、いくばくも立たないうちに入獄したので、この憎悪、反感の的からはずれていた。そこで彼の出獄を歓迎する集会には、両派の代表者らしい者がほとんどみな出席していた。時は明治四一年六月二二日、わたしは紺がすりのひとえを着ていたことを覚えている。

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