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TORENDIA

龍と詩人

本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

洞窟に封じられた老龍チャーナタは、詩賦の競いで自身がかつて詠んだ歌を偶然に歌ってしまったと悩む青年スールダッタと対面する。スールダッタの告白に対し、チャーナタは歌の真意を説いて彼を諭し、海へ入るための赤い珠を授ける。かつての過ちを悔い、十万年の刑期を全うする龍と、彼との対話を通じて己の道を見出した青年が、再会を誓い合い交流を深める様子を描く。

宮澤賢治

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🎧 龍と詩人 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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龍のチャーナタは洞のなかへさして來る上げ潮からからだをうねり出した。

洞の隙間から朝日がきらきら射して來て水底の岩の凹凸をはっきり陰影で浮き出させ、またその岩につくたくさんの赤や白の動物を寫し出した。

チャーナタはうっとりその青くすこし朧ろな水を見た。それから洞のすきまを通して火のやうにきらきら光る海の水を淺黄いろの天末にかかる火球日天子の座を見た。

(おれはその幾千由旬の海を自由に漕ぎ、その清いそらを絶え絶え息して黒雲を卷きながら翔けれるのだ。それだのにおれはここを出て行けない。この洞の外の海に通ずる隙間は辛くも外をのぞくことができるに過ぎぬ。)

(聖龍王、聖龍王。わたしの罪を許しわたくしの呪をお解きください。)

チャーナタはかなしくまた洞のなかをふりかへり見た。そのとき日光の柱は水のなかの尾鰭に射して青くまた白くぎらぎら反射した。そのとき龍は洞の外で人の若々しい聲が呼ぶのを聽いた。龍は外をのぞいた。

(敬ふべき老いた龍チャーナタよ。朝日の力をかりてわたしはおまへに許しを乞ひに來た。)

瓔珞をかざり黄金の太刀をはいた一人の立派な青年が外の疊石の青い苔にすわってゐた。

(何を許せといふのか。)

(龍よ。昨日の詩賦の競ひの會に、わたしも出て歌った。そしてみんなは大へんわたしをほめた。いちばん偉い詩人のアルタは座を下りて來て、わたしを禮してじぶんの高い座にのぼせ(三字不明)の草蔓をわたしに被せて、わたしを賞める四句の偈をうたひ、じぶんは遠く東の方の雪ある山の麓に去った。わたしは車にのせられて、わたしのうたった歌のうつくしさに酒のやうに醉ひ、みんなのほめることばや、わたしを埋める花の雨にわれを忘れて胸を鳴らしてゐたが、夜更けてわたしは長者のルダスの家を辭して、きらきらした草の露を踏みながら、わたしの貧しい母親のもとに戻ってゐたら、俄かに月天子の座に瑪瑙の雲がかかりくらくなったので、わたくしがそれをふり仰いでゐたら、誰かがミルダの森で斯うひそひそ語ってゐるのを聞いた。

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