TORENDIA
貢院の春
原勝郎
TORENDIA
貢院の春
本文約5,900字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
大正三年、中国を旅した著者は、南京にある科挙の試験場、貢院の荒廃した姿を目の当たりにする。かつて数万の士子が才を競った広大な房舎は、今や無用の長物と化し、その廃墟に咲く黄紫の菜の花が往時を偲ばせる。著者はこの地を訪れた経験を綴るとともに、近代の視点から中国の科挙制度を再評価する。科挙は決して国家衰退の主因ではなく、公平な人材登用を通じて長きにわたり文明を支え、階級制の腐敗を抑制した制度であったと論じる。
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🎧 貢院の春 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら
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大正三年の春南海よりの歸へるさに支那内地を一瞥せばやと思ひ立ち、上海の淹留中には一夜泊りにて、杭州に遊び、噂にのみは年久しく耳馴れし西湖の風光をまのあたり眺め、更に上海よりして陸路金陵に赴き、長江を遡り、漢口を經て北京に入りたりしが、車上に將た船中に、日々眼に遮るもの一として驚神の因たらざるはなく、外國旅行には多少の經驗ある己にも、支那は再遊したき國なりとの感を禁ずること能はざりき。つね/\は支那の文學こそ誇張のみを事とするものと信じ居たりしに、現地に臨みては、其評判程ならぬを覺り、其誇張の適例とも見做すべき詩文の中にも、忠實なる寫生を企てたるものゝ少からぬことを始めて知りぬ。