TRENDIA CLASSIC
花をうめる
新美南吉
1 / 5
その遊びにどんな名がついているのか知らない。まだそんな遊びをいまの子どもたちがはたしてするのか、町を歩くとき私は注意してみるがこれまでみたためしがない。あのころつまり私たちがその遊びをしていた当時でさえ、他の子どもたちはそういう遊びを知っていたかどうかもあやしい。いちおう私と同年輩の人にたずねてみたいと思う。
なんだか私たちのあいだにだけあり、後にも先にもないもののような気がする。そう思うことは楽しい。してみると私たちのなかまのたれかが創案したのだが、いったいたれだろう、あんなあわれ深い遊戯をつくり出したのは。
その遊びというのは、ふたりいればできる。ひとりがかくれんぼのおにのように眼をつむって待っている。そのあいだに他のひとりが道ばたや畑にさいているさまざまな花をむしってくる。そして地べたに茶飲茶碗ほどの――いやもっと小さい、さかずきほどの穴をほりその中にとってきた花をいい按配に入れる。それから穴に硝子の破片でふたをし、上に砂をかむせ地面の他の部分とすこしもかわらないようにみせかける。
「ようしか」とおにが催促する、「もうようし」と合図する。するとおにが眼をあけてきてそのあたりをきょろきょろとさがしまわり、ここぞと思うところを指先でなでて、花のかくされた穴をみつけるのである。それだけのことである。
だがその遊びに私たちが持った興味は他の遊びとはちがう。おににかくしおおせて、おにを負かしてしまうということや、おにの方では、早くみつけて早くおにをやめるということなどにはたいして興味はなかった。もっぱら興味の中心はかくされた土中の一握の花の美しさにつながっていた。
新美南吉の他の作品
TRENDIA CLASSIC
おしどり
新美南吉
おしどり
新美南吉 ・ 約13分
TRENDIA CLASSIC
赤とんぼ
新美南吉
赤とんぼ
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
赤い蝋燭
新美南吉
赤い蝋燭
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
明日
新美南吉
明日
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
あとがき
新美南吉
あとがき
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
あし
新美南吉
あし
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
一年生たちとひ
よめ
新美南吉
一年生たちとひよめ
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
一れつ
新美南吉
一れつ
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
飴だま
新美南吉
飴だま
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
ウサギ
新美南吉
ウサギ
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
ウグヒスブエヲ
フケバ
新美南吉
ウグヒスブエヲ フケバ
新美南吉
TRENDIA CLASSIC
井戸
新美南吉
井戸
新美南吉