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TORENDIA

電車と風呂

本文約4,800字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

電車に乗る人々の不愉快で緊張した表情を目にした著者は、文明の利器が人々に与える影響を考察する。東京市民が銭湯で一様に寛いだ表情を見せることに着目し、公衆浴場が持つ精神的開放効果を論じる。文明の刺激が過度な緊張を生む中で、風呂という空間が人々の心に余裕をもたらし、社会的な対立や過激な思想を緩和する可能性を示唆し、理想的な共用施設について夢想する。

寺田寅彦

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🎧 電車と風呂 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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電車の中で試みに同乗の人々の顔を注意して見渡してみると、あまり感じの好い愉快な顔はめったに見当らない。顔色の悪い事や、眼鼻の形状配置といったようなものは別としても、顔全体としての表情が十中八、九までともかくも不愉快なものである。晴れ晴れと春めいた気持の好い表情は、少なくも大人の中にはめったに見付からない。大抵神経過敏な緊張か、さもなくば過度の疲労から来る不感が人々の眼と眉の間や口の周囲に残忍に刻まれている。たまには面白そうに笑っている人があってもその笑いは多くの場合には笑わないよりも一層気持の悪い笑いである。これらの沢山の不愉快な顔が醸す一種の雰囲気は強い伝染性を持っていて、外から乗り込んで来る人の心に、すぐさま暗い影を投げないではおかない、そして多くの人の腹の虫の居所を変えさせようとする傾向がある。

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