TRENDIA CLASSIC
青春論
坂口安吾
1 / 47
一 わが青春
今が自分の青春だというようなことを僕はまったく自覚した覚えがなくて過してしまった。いつの時が僕の青春であったか。どこにも区切りが見当らぬ。老成せざる者の愚行が青春のしるしだと言うならば、僕は今も尚青春、恐らく七十になっても青春ではないかと思い、こういう内省というものは決して気持のいいものではない。気負って言えば、文学の精神は永遠に青春であるべきものだ、と力みかえってみたくなるが、文学文学と念仏のように唸ったところで我が身の愚かさが帳消しになるものでもない。生れて三十七年、のんべんだらりとどこにも区切りが見当らぬとは、ひどく悲しい。生れて七十年、どこにも区切りが見当らぬ、となっては、之は又助からぬ気持であろう。ひとつ区切りをつけてやろうか。僕は時にこう考える。さて、そこで、然らば「如何にして」ということになるのであるが、ここに至って再び僕は参ってしまう。多分誰でも同じことを考えると思うけれども、僕も又「結婚」というひとつの区切りに就て先ず考える。僕は結婚ということに決して特別の考えを持ってはおらず、こだわった考え方もしてはおらず、自然に結婚するような事情が起ればいつでも自然に結婚してしまうつもりなのである。けれども、それで僕の一生に区切りが出来るであろうか。多分区切りは出来ないと思うし、かりに区切りが出来たとしても、その区切りによって僕の生活が真実立派になるということは決してないと考える。僕は愚かだけれども、その愚かさは結婚に関係のない事情にもとづくものである。結婚して、子供も大きくなって七十になって、そうして、やっぱり、青春――どこにも一生の区切りがない、これは助からぬ話だと僕は恐れをなしてしまう。
坂口安吾の他の作品
TRENDIA CLASSIC
甘口辛口
坂口安吾
甘口辛口
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
育児
坂口安吾
育児
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
「大国主命」
坂口安吾
「大国主命」
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
近況報告
坂口安吾
近況報告
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
今後の寺院生活
に対する私考
坂口安吾
今後の寺院生活に対する私考
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
今後の寺院生活
に対する私考
坂口安吾
今後の寺院生活に対する私考
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
作者附記〔「火
」『群像』連載
第一回〕
坂口安吾
作者附記〔「火」『群像』連載第一回〕
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
「鷹」
坂口安吾
「鷹」
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
単独犯行に非ず
坂口安吾
単独犯行に非ず
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
当世らくがき帖
坂口安吾
当世らくがき帖
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
「復員殺人事件
」について
坂口安吾
「復員殺人事件」について
坂口安吾 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
「文芸冊子」に
ついて
坂口安吾
「文芸冊子」について
坂口安吾 ・ 約1分