言葉の不思議
本文約10,100字 ・ 読了時間 約21分
あらすじ(AIが作成しました)
言語の音韻と意味の類似性について、日本語と外国語を対比しながら統計的な見地から論じる。笑う、べらぼう、頭など、特定の語句が異なる言語間で偶然以上の共通性を持つ事例を多数挙げ、従来の言語学では説明しきれないこれらの現象に対し、統計的な研究方法による科学的吟味の必要性を提唱する。日常の雑談や文献で見かけた語源説を断片的に記録し、石も吟味しなければ玉は見つからないという信念のもと、言語の事実を拾い集める重要性を綴る。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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一
「鉄塔」第一号所載木村房吉氏の「ほとけ」の中に、自分が先年「思想」に書いた言語の統計的研究方法(万華鏡所載)に関する論文のことが引き合いに出ていたので、これを機縁にして思いついた事を少し書いてみる。
「わらふ」と laugh についてもいろいろなおもしろい事実がある。laugh は (AS.)hlehhan から出たことになっているらしいが、この最初のhがとれて英語やドイツ語になり、そのhが「は」になり、それから「わ」になったと仮定するとどうやら日本語の「笑ふ」になりそうである。ギリシアの gelao もgが gh になり、それからgがとれて、「は」「わ」と変わればやはり日本語になるからおもしろい。(L.)rideo, (Fr.)rire は少しちがうが「ら」行であるだけはたしかである。「げらげら笑ふ」「へらへら笑ふ」というから g+l や h+l のような組み合わせは全く擬音的かもしれない。マレイの glak も同様である。馬の笑うのは ilai でこれは日本に近い。
「あざ笑ふ」の「あさ」は「あさみ笑ふ」の「あさ」かと思うがこれは (Skt.)√has に通じる。一人称単数現在なら hasami だからよく似ている。hsita は笑うべき事で「はしたない」に通じる。「はしゃぐ」が笑い騒ぐ事で、「あさましい」も場合によると「笑ひ事」であるのもおもしろい。
セミティックの方面でも (Ar.)basama は「微笑する」で「あさむ」「あさましい」と似ている。しかし「笑ふ」の dahika はむしろ「たはけ」に似ている。(Ar.)fariha は「喜ぶ」で「わらふ」に似ている。
「あさましい」はまた (Skt.)vismayas で「驚く」ほうにも通じるが、それよりも元の smi, smaya で微笑にもなる。
(Skt.)garh は非難するほうだが軽蔑して笑うほうにもなりうるのである。これも g+r である。そう言えば「愚弄」もやはり g+r だから妙である。