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TORENDIA

白銀の失踪

本文約24,300字 ・ 読了時間 約49分

あらすじ(AIが作成しました)

ダートムアの調馬場でウェセックス賞杯の有力馬・白銀号が失踪し、調馬師のジョン・ストレーカが死体で発見される。シャーロック・ホームズは助手ワトソンを伴い現地へ赴き、犯行現場に残された些末な証拠を緻密に分析する。二重生活を送っていた調馬師の背後にある動機や、馬の習性を鋭く推理し、事件の全容と名馬の行方を解き明かすまでの過程を描く。

コナンドイル Conan Doyle

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「ワトソン君、僕は行かなきゃならないんだがね」

ある朝、一緒に食事をしている時にホームズがいった。

「行くってどこへ?」

「ダートムアだ――キングス・パイランドだ」

私は格別おどろきもしなかった。事実、私は、今全イングランドの噂の種になっているこの驚くべき事件に、ホームズが関係しないということをむしろ不思議にさえ思っていたのである。前の日、ホームズは終日眉根をよせた顔を首垂れて、強い黒煙草をパイプにつめかえつめかえ部屋の中を歩き廻ってばかりいて、私が何を話しかけても何を訊ねても石のように黙りこくっていた。あらゆる新聞の新らしい版が出るごとに、いちいち配達所から届けられたが、それすらちょっと眼を通すだけですぐに部屋の隅へ投げすてた。しかも、彼が一言も口をきかないにも拘らず、彼の頭脳の中で考えられていることは、私にはよく分っていた。いま彼の推理力と太刀打ちの出来る問題といえばただ一つ、ウェセックス賞杯争覇戦出場の名馬の奇怪なる失踪と、その調馬師の惨殺された事件があるのみだ。だから彼が突然、その悲劇の現場へ行くといい出したことは、私にとっては予期していたことでありまた希望していたことでもあったのだ。

「差支えがなければ僕も行ってみたいんだがね」と、私はいった。

「君に来てもらえれば大変有難いんだが。この事件は極めて特異なものだと思われる節があるから、君にしたって行くことはまんざらむだにはなるまいと思う。今からパディントン停車場へ行けば、ちょうど汽車の時間にいいだろう。委しいことは途々話すとして、すまないが君のあの上等の双眼鏡を持って来てくれたまえ」

それから一時間あまりの後には、私はエクスタ行の一等車の一隅に腰かけていた。シャーロック・ホームズは耳垂れつきの旅行用ハンチングを被った顔を緊張させて、パディントンで新らたに買った新聞に忙しそうに眼を通していた。そしてリイディングをずっと過ぎた頃、彼はそれ等の新聞をまとめて座席の下へ突込み、シガー・ケースを取出して私にもすすめた。

「至極順調に走ってるようだね」

ホームズは窓の外を眺めながらそういった。そして時計を出して見て、

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